演題

O3-111-6-3

移植成績向上のために -肝移植術後重症感染症に対する対策-

[演者] 石山 宏平:1
[著者] 清水 誠一:1, 大平 真裕:1, 田原 裕之:1, 井手 健太郎:1, 小林 剛:1, 田中 友加:1, 大段 秀樹:1
1:広島大学病院 消化器・移植外科学

広島大学病院では,2016年11月末までに250例の肝移植(成人生体肝移植234例,脳死肝移植16例)を経験した.術式の安定化や免疫抑制管理の進歩により肝移植後の治療成績は年代別に向上しているが,依然として感染症の発症を往往に経験する.感染症の診断の遅れや重症化が早期死亡の主要原因となることから,感染症制御は安全な術後管理のための最優先課題と考えられる.
我々は,肝臓癌肝移植患者に対してドナー肝臓由来活性化ナチュラルキラー(NK)細胞を用いた術後補助免疫療法を行っており,広島大学での生体肝移植及びマイアミ大学での脳死肝移植における第I相試験を終え,安全性を確認した.抗癌効果に関しては,ミラノ基準逸脱症例に対するNK細胞療法群において無再発生存率が有意に向上することが確認できた.更に,肝移植術後早期の血流感染(bloodstream infection : BSI)が予後不良因子となることから,感染症に関するサブ解析も行った.NK細胞移入療法の有用性と自然免疫遺伝子多型がBSIの発症および起因菌推定に有用なbiomarkerとなる可能性について検討した.初回生体肝移植レシピエント89例を対象とし,C1qA,FcγRIIaおよびFcγRIIIaのSNPをPCR-RFLPで測定し,BSIの起因菌の種類との関連を解析したところ,FcγRIIIaの[158 F/F or F/V] (F carrier群)は[158V/V] (VV群)に比べBSIの発症率が有意に高かった(13/45 (28.9%) vs 4/44 (9.1%), p = 0.029).FcγRIIIaのSNP別にみるとF carrier群ではVV群と比較して有意にグラム陽性球菌(GPC)による感染を多く認め(11/ 15 (73.3%) vs 1/6 (16.7%), p=0.046),11症例のうち5例はMRSAが原因菌であった.これに対して,ドナー肝由来活性化NK細胞移入療法を行ったF carrier群 16症例ではGPCを起因菌としたBSIは認めず,細胞移入療法を行ってないF carrier群 19症例と比較して予後は有意に良好であった(log-rank p=0.031).術後のNK細胞移入療法によって,感染防御に対する遺伝的脆弱性が補完される可能性が示唆された.
以上の結果より,広島大学では肝移植術後重症感染症に対する対策としてドナー肝臓由来活性化NK細胞を用いた肝移植後感染症予防の第I/II相試験を開始している.本臨床研究における活性化NK細胞移入療法の臨床的有効性が確認されれば,重症感染症の発現が低減し,肝移植の術後予後に大きく貢献することが期待される.
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