演題

本邦における胃癌に対する腹腔鏡下手術成績に関する後ろ向き調査研究

[演者] 吉田 和弘:1
[著者] 本多 通孝:2, 隈丸 拓:3, 小寺 泰弘:4, 掛地 吉弘:5, 今野 弘之:6, 宮田 裕章:7, 後藤 満一:8, 瀬戸 泰之:9
1:岐阜大学大学院 腫瘍外科学, 2:福島県立医科大学医学部災害医療支援講座, 3:東京大学大学院医療品質評価学講座, 4:名古屋大学大学院 消化器外科学, 5:神戸大学大学院 食道胃腸外科学, 6:浜松医科大学医学部 外科学第二, 7:慶應義塾大学医学部医療政策管理学教室, 8:大阪府立急性期・総合医療センター 消化器一般外科, 9:東京大学 消化管外科学

(背景)腹腔鏡胃切除術は急速に普及し,現在では胃癌治療のガイドラインでも早期癌での治療選択枝として掲載されるに至った.さらに進行癌での有用性について臨床試験が実施されており,その結果が待たれている.しかしながら,臨床試験での対象患者は,高リスク患者や高齢者が除外される傾向にあり,さらに専門施設や習熟した専門医により施行されており,一般病院を含めた実臨床の診療結果を反映しているかどうかは不明である.このような問題を解決するためには,悉皆性の高い,リアルタイムの臨床データを臨床現場にフィードバックする仕組みを構築する必要があり,我が国では,2011年よりNational Clinical Database System(NCD)による手術症例登録システムが開始された.手術リスクと,術後合併症に関する詳細な調査が行われ,年間120万件以上の症例登録が行われている.本研究はこのNCDシステムを利用し,胃癌に対する腹腔鏡手術の安全性について後ろ向き調査研究を行った.
(方法)2012年1月から2013年12月までの期間に胃癌症例で胃切除術70,346例が登録された.これらの症例で,Stage IおよびStage II,III,IV胃癌症例に対する腹腔鏡下胃切除術の安全性について,Propensity Score Matching (PSM)法を用いて開腹 (ODG)群と腹腔鏡胃切除(LDG)群で比較した.マッチングの結果,Stage I症例が28,772例(ODG:14,386例,LDG:14,386例),Stage II,III,IV症例が7,476例(ODG:3,738例,LDG:3,738例)であり,手術関連死亡,再手術の発生割合,術後在院日数,術後合併症の種類について検討した.
(結果)出血量はLDGに少なく,手術時間ではLDG群が有意に長かったが,手術死亡,在院死亡ではstage Iおよびstage II以上においてODGおよびLDG群で有意差は認められなかった.Stage I では,SSI,創し開および肺炎がODG群に多く,膵液痩がLDG群に多くみられた.縫合不全や腹腔内膿瘍は両群で差を認めなかった.Stage II 以上では,術後合併症はいずれの項目も両群に差を認めなかった.
(結語)NCDデータによると実臨床として腹腔鏡手術は比較的安全に行われているものと考えられた.
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