演題

WS15-2

急性汎発性腹膜炎手術症例における敗血症の病態と合併する播種性血管内凝固症候群(DIC)に対する治療戦略

[演者] 岡本 好司:1
[著者] 山吉 隆友:1, 上原 智仁:1, 野口 純也:1, 木戸川 秀生:1
1:北九州市立八幡病院 外科

【目的】急性汎発性腹膜炎では,周術期に凝固異常を発症し,播種性血管内凝固症候群(Disseminated Intravascular Coagulation;DIC)を合併する頻度が高い.さらにDICは,敗血症由来の凝固異常と治療による手術侵襲が加わり,予後が左右される.このような病態を理解して治療にあたることは重要である.
【対象と方法】エンドトキシン動物モデルにて,敗血症の病態を凝固系マーカーや組織因子,HMGB1を中心に検討した.さらに,当院で経験した下部消化管穿孔による汎発性腹膜炎80例(外傷や内視鏡による穿孔を除外)を対象として術後DIC発症および増悪を考慮に入れた治療法について,術後にDICを発症した時のみ治療を行っていた時期(~2011年11月)に経験した55例と腹膜炎発症後術前にDICに対して治療を開始するようになった時期(2011年12月~2017年2月)に経験した25例の2群にわけ比較検討した.
【成績】基礎的検討:敗血症動物モデルでは,炎症と凝固のクロストークが主要な病態であるDICを発症していた.さらには,DNAの構造と維持,転写の促進などに重要な役割を果たすHMGB1は,局所では炎症反応を引き起こし,全身ではDICや多臓器障害を発症していた.これらは抗炎症作用や抗HMGB1作用も持つリコンビナントトロンボモジュリン(rTM)の使用で改善された.臨床検討:術後群は,男性37例,女性18例,平均年令68.6才(20-94才),生存41例で救命率74.5%,術後DIC合併は36例(65.5%),DIC合併例の救命例は22例,救命率は61.1%であった.術前治療開始群は,男性14例,女性11例,平均年令73.0才(34-97才),生存21例で救命率84.0%,DIC合併は17例(68.0%),DIC合併例の救命例は15例,救命率は88.2%であった.全症例で術前に投与開始した抗DIC薬の出血の副作用はなかった.両群間での術前のDICスコアに有意な差はなかったが,術後のスコアは術前治療開始群で有意に低い傾向であった.
【結論】下部消化管穿孔性汎発性腹膜炎症例は,DICを合併すると予後は不良である.治療目的である外科的手術を施行後はDIC発症頻度がさらに高くなり,手術侵襲によりDIC(凝固異常)が悪化する.しかし,抗炎症作用や抗HMGB1作用を併せ持つ術前からのrTMなどを用いた抗DIC療法開始は,安全にかつ予後を改善する可能性がある.
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