演題

WS14-10

ヒトiPS細胞由来肝細胞を生体由来無細胞化骨格に充填した再生補助肝の再生医療応用への技術創出

[演者] 東 尚伸:1
[著者] 八木 洋:1, 田島 一樹:1, 日比 泰造:1, 阿部 雄太:1, 北郷 実:1, 篠田 昌宏:1, 登美 斉俊:2, 水口 裕之:3, 北川 雄光:1
1:慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科, 2:慶應義塾大学薬学部 薬学研究科, 3:大阪大学大学院 薬学研究科 分子生物学分野

[背景]induced pluripotent stem cell (以下iPS細胞)の開発による近年の再生医療技術の発展はめざましく,肝臓分野においても臨床応用が期待できる多くの技術が創出されているが,スケールアップ実現や硬変肝を対象とする際の技術的困難性が臨床応用に向けた高い障壁となっている.我々はこれを打破するため臓器脱細胞化技術を基盤として大量のブタ肝細胞およびヒトiPS細胞を用いた部分肝臓グラフトを作製し,大動物の前臨床モデルを用いてその機能と臨床的有用性について検討した.
[方法]これまでに確立した脱細胞化プロトコールを更に最適化し,ブタ肝臓由来の肝臓骨格を作製して再評価した.部分肝臓に成型した後に他のブタ肝臓から分離抽出した109個を超える新鮮肝細胞もしくは大阪大学で大量培養を行った5 x 108個を超えるヒトiPS由来肝細胞様細胞を用い,更にブタもしくはヒト血管内皮細胞を充填して,体外で再生補助肝を作製した.ブタ正常肝臓モデルへの移植を実施した後,前臨床試験モデルとしてレトロルシン投与と60%肝切除を併用するブタ肝障害モデルを作製し,再生補助肝を異所性に移植した.移植後のグラフト内部の経時的変化と肝障害の改善効果をHE染色・Azan染色・走査型電子顕微鏡・免疫染色・ビリルビン染色・血液データ・CYP遺伝子発現解析等で多面的に評価した.レトロルシン非投与+60%肝切除と,レトロルシン投与+60%肝切除を実施した群を対照群とした.
[結果]最適化したプロトコールにより,従来と比較して脈管構造の維持がより良好となった.移植後のグラフト内細胞は移植前より明らかに増加し,Alb陽性の成熟肝細胞が間質に,CK19・EpCAM陽性の胆管上皮細胞やCD31陽性の血管内皮細胞が脈管壁を構成しながら生着する様子が観察された.特に移植30日目には肝細胞内外に明らかな胆汁産生が確認された.また移植前と比較して移植後のCYP活性の増加を認め,補助肝が体内で増殖・機能再生する可能性が示唆された.更にコントロール群と比較して術後のビリルビン・肝酵素・アンモニア・PT等の肝障害の是正が認められた.
[結語] 本研究により,脱細胞化骨格がスケールアップのための技術基盤となり,大量の細胞を充填した再生肝臓グラフトが体内で再生し,肝障害を改善する可能性が示唆された.今後更に大動物を用いた前臨床試験を進め,効果・安全性のエビデンスを確立していきたい.
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