演題

WS14-9

iPS細胞/リプログラミング技術を応用した臓器再生医療― トランスレーショナルリサーチの最前線

[演者] 山田 高嗣:1,2
[著者] 植田 剛:1, 中本 貴透:1, Susan Bonner-weir:2, Qiao Zhou:3, Gordon Weir:2,3, 庄 雅之:1
1:奈良県立医科大学医学部 消化器・総合外科, 2:ハーバード大学医学部 ジョスリン糖尿病センター, 3:ハーバード・ステムセル研究所

近年,体細胞に4つの遺伝子を導入して再プログラム(リプログラム)することにより,多能性を有するiPS細胞を作製する技術が開発され,iPS細胞を用いた再生医療の臨床応用に対する期待が高まっている.これまでにiPS細胞から様々な細胞への分化誘導は多数報告されてきたものの,臓器への分化誘導は困難であると考えられてきた.我々は,三次元立体培養系を用いることにより,iPS細胞から「管腔状構造の蠕動運動する腸管(iGut)」を立体臓器として分化誘導することに成功し世界をリードしてきた.本研究は,原因不明の難病である炎症性腸疾患において発症の機序解明や治療としての創薬開発に役立つことが期待できる.一方,糖尿病の治療においては,ドナー不足が深刻な膵島移植にかわる新たな膵臓の再生医療が切望されている.これまで,iPS細胞を用いてインスリン産生細胞(β細胞)への分化誘導について多数報告されてきたが,分化誘導効率が低く,グルコース応答能の低い未熟なβ様細胞であり,がん化のリスクなど安全性においても,臨床応用に向けて解決すべき多くの問題があった.そこで,我々はiPS細胞を用いるのではなく,iPS細胞の作製技術である「リプログラミング技術」を応用して,膵島の発生に関与する3つの遺伝子(Ngn3,Pdx1,Mafa)を同時に発現させるベクターを独自に開発し,マウスより単離した膵管細胞に遺伝子導入することにより,in vitro でβ細胞に分化誘導することに成功した.さらに,3つの遺伝子を糖尿病マウスの膵臓に直接注射することにより,in vivoで遺伝子導入すると,膵臓内で腺房細胞がリプログラムされてβ細胞に転換され,13ヶ月にわたって長期生存し膵島様構造を形成し,糖尿病マウスの血糖を低下させることを見出した.誘導されたβ細胞は膵臓内でグルコース応答能を獲得したことから,既存の膵細胞からリプログラムされたβ細胞は生体内で成熟β細胞に向かって機能的に発達していくことが示された.本研究は,iPS細胞に戻すことなく,特定の遺伝子を用いて生体内で臓器をリプログラミングするという,臨床応用に直結した画期的な臓器再生医療であり,ドナー不足が深刻な移植医療にかわる次世代の治療へのブレークスルーとなるとともに,消化器外科学の新しいパラダイムとしておおいに期待できる.本学会では,我々の最先端のトランスレーショナルリサーチを発表するとともに,今後の課題についても深く議論したいと考えている.
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