演題

WS14-7

糖結合タンパク「レクチン」をキャリアーとした新規癌治療法の開発

[演者] 下村 治:1,2
[著者] 小田 竜也:1, 舘野 浩章:2, 平林 淳:2, 鄭 允文:1, 大河内 信弘:1
1:筑波大学附属病院 消化器外科, 2:産業技術総合研究所 創薬基盤部門

背景:近年の分子標的治療薬の進歩も膵癌の様な難治癌には無力で,既存の概念に捕らわれない革新的な治療法開発が急務である.抗体医薬は細胞表面下層の膜タンパクを標的にするが,細胞の最外層は糖鎖修飾の結果,糖層(Glyco layer)で構成されており抗体の送達を阻んでいる.癌特異的な糖鎖そのものを治療ターゲットとする治療戦略はより効果的なはずだが,今までその手段が無く糖鎖標的治療は全く開発されてこなかった.我々は膵癌細胞特異的な糖鎖に特異的に反応するレクチンを発見し,本レクチンに薬剤を融合した薬剤融合型レクチン(Lectin drug conjugate; LecD)を開発した.
方法:レクチンマイクロアレイによる膵癌細胞の糖鎖発現解析,膵癌臨床検体を用いたレクチン染色を行い,膵癌に特異的に反応するレクチンを同定する.レクチンを緑膿菌由来外毒素と融合し,薬剤融合型レクチンを作成した.LecDの膵癌細胞株への抗腫瘍効果,膵癌マウスモデルへの腹腔投与,血中投与における腫瘍制御効果をIn vitroIn vivoで検証した.
結果:Xenograftの組織形態と膵癌幹細胞の発現パターンで分類した膵癌細胞株を用いて,高密度レクチンマイクロアレイ解析,および標識レクチンを用いた免疫染色により,臨床膵癌細胞に特異的に反応するレクチンの同定に成功した.In vitroでのLecDの殺細胞効果は,レクチンに反応性を有する膵癌細胞株ではIC50= 1.04 pg/mlと極めて高い殺細胞効果を確認できた.これは既存のADC (Antibody Drug conjugate)に比べて1000倍以上(IC50= 1380 pg/ml)強力であった.皮下腫瘍モデル,腫瘍片移植モデルを作成し,LecD局所投与による効果を確認すると,投与量依存的な抗腫瘍効果を確認できた.更に,膵癌同所移植モデルを作成し,腹腔投与,血中投与ともに,生食(Control)群と比較し有意に腫瘍の縮小効果を確認することができた.また,本レクチン単独では全ての血液型の赤血球において血液凝集活性がないことを確認した.
考察:レクチンを用いた治療法は,既報のADCと比較し,約1000倍強い抗腫瘍効果を確認できた.これはタンパク上に存在する糖鎖と脂質2重膜上の糖脂質を同時にターゲットすることにより,より効率的な薬剤送達を可能にしたことが理由として想定される.LecDは大腸菌で大量に生産可能であり,高額な医療負担が問題となっている抗体に取って代わる新たな癌治療の選択肢になりうる可能性がある.
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