演題

ビッグデータに基づく腹腔鏡下手術の安全性と有用性に関する臨床研究

[演者] 衛藤 剛:1
[著者] 白石 憲男:2, 比企 直樹:3, 北野 正剛:4, 猪股 雅史:1
1:大分大学医学部 消化器・小児外科, 2:大分大学医学部 総合外科・地域連携学, 3:がん研究会有明病院 消化器外科, 4:大分大学

本邦において,消化器外科領域に腹腔鏡下手術が導入されて約30年が経過しようとしている.これまで教育・トレーニングの実践,また光学機器・手術器具の発展により腹腔鏡下手術は目覚ましい普及を遂げている.
各消化器外科領域においては診療ガイドラインが作成され,エビデンスの基づく医療の実践が推進されている.一方,腹腔鏡下手術に関するエビデンスはまだ不足しており,クリ二カルクエスチョンに対する答えを導くため,現在エビデンス創生が行われている.胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術は,いくつかの後ろ向き観察研究や前向き研究結果に基づき,ガイドライン上臨床病期I胃癌に対してようやく日常診療の選択肢となった.その適応が進行胃癌に拡大されつつある現状において,本術式の妥当性を検証するため,進行胃癌を対象とした多施設共同ランダム化第II/III相試験(JLSSG0901)が行われた.507例の登録が終了し短期成績を解析中であるが,その解釈においては,熟練した外科医によって手術が行われた結果であること,そして第III相試験の長期成績がまだわかっていないというlimitationに留意する必要がある.
2011年から登録が開始されたNational Clinical Database(NCD)の登場により,そのビッグデータを用いた観察研究によって新たなエビデンス創生が期待されている.日本内視鏡外科学会においては,日本胃癌学会および日本消化器外科学会合同で検討会を開き,「胃癌への腹腔鏡下胃切除術に関する多施設共同前向きコホート研究」を進めている.本研究の特色として,層化ランダム抽出により参加施設を選別したことと,従来のNCD入力データに加え,臨床病期,リンパ節郭清度などの項目を追加し前向きに登録したことが挙げられる.2014年8月から2015年7月の登録期間における解析対象は,幽門側胃切除術5288例,胃全摘術2494例であった.現在,Propensity Score Matchingを用い,開腹手術と腹腔鏡下手術の手術成績を比較検討している.
データの信頼性,解釈の容易さの点から内的妥当性に優れたRCTと,時間や外的妥当性に優れたNCDによる観察研究という2つのビッグデータの結果を補完しあうことで,リアルワールドの臨床現場に還元できるエビデンス創生になると期待される.
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