演題

WS13-9

オーダーメイド肝臓模型を用いた肝臓手術の安全性向上を検証する臨床試験

[演者] 福光 剣:1
[著者] 石井 隆道:1, 南 貴人:1, 瀬尾 智:1, 田浦 康二朗:1, 安近 健太郎:1, 岡島 英明:1, 海道 利実:1, 上本 伸二:1
1:京都大学附属病院 肝胆膵・移植外科

肝臓手術は高度な技量が必要とされる手術の1つである.4種類の脈管(動脈,静脈,門脈,胆管)が複雑に交錯しており,外表から観察することが出来ないことや,解剖学的な破格が多いことなどがその理由で,経験のある外科医であっても正確で安全な手術を行うため緊張を強いられるのが現状である.現在,術前に撮影したCT画像からコンピューター処理を行いモニター上で2次元画像を立体に見えるように再構築する技術が普及してきたが,2次元画像を3次元の立体として理解することには限界がある.僅かな認識のズレが患者の生命に直接大きく影響する緊迫した状況の高難度な手術において,より一層の安全性を確保する方策が求められている.我々は数年前より,患者さんの肝臓の模型を作製し,手術室に持ち込み,実際に手に取りながら術中ナビゲーションに用いる試みを行ってきた.全国的にも模型を用いた試みについて報告が増えてきているが,これらの模型によるナビゲーションの有効性についての検証は未だ十分に行われていない.
今回,この肝臓模型が手術の安全性向上に有効であるかを検証するため,日本医療研究開発機構(AMED)の委託を受けて臨床試験を行うこととなった.対象となる症例は,系統的肝切除術と高難度手術(肝門部胆管癌や非定型的な手術症例など)を行う症例とし,手術中の外科医のストレス,肝静脈などの脈管の露出率,術中出血量や手術時間,脈管の誤認の有無などについて評価する.約2年で100例の症例を集積する予定で,オーダーメイド肝臓模型の有効性について検証する.
使用する肝臓模型は,術前の造影CTにて得られた画像情報を基に肝臓解析ソフトを用いて,肝実質・門脈などの各脈管,腫瘍の情報を個別に取り出して光造形による立体モデルを作成し,これをマスターモデルとして鋳型を製作し,その型にポリウレタン樹脂にて各種の脈管と肝実質,腫瘍とを一体として注型する.これにより色分けされた各種脈管を有する原寸大の肝臓3次元実体モデルが完成される.このモデルは滅菌が可能であり術中ナビゲーションとして実際に術野にて切離面を設定したり切離面に現れた脈管の同定を行ったりするために用いることが可能である.
また,この肝臓模型は,患者への説明や若手医師向けの教育用ツールとしても活用できるため,臨床試験を通じた有効性の評価と平行して,教育用の模型の改良や作製コストの改善も進めていく予定である.
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