演題
WS13-1
消化器外科手術に役立つコンピュータ支援手術 |

【方法】i) 当科での肝切除症例をSYNAPSE VINCENT(SV)による手術シミュレーション導入前後で比較した. それぞれ120症例を対象として, 手術, 臨床成績を比較し, さらにサブグループ解析を行った. ii) 当科で独自に開発した変形シミュレーションシステムLiversim(LS)を使用して, 肝切除だけでなく, 膵切除, 胆嚢切除, 胃切除の術前シミュレーション, 術中ナビゲーションを行っている. iii) 当科で腹腔鏡下肝切除を実施したLS使用群7例と, SV使用群20例について, 手術成績を比較した. iv) カーナビのような真の手術ナビゲーションを可能とするために, リアルタイムで計測した術野をシミュレーションソフトと同期させるための予備実験を施行した.
【結果】
i) 出血量(導入前550ml(50-5840)/導入後597ml(18-16,060)), 手術時間(373分(125-866)/337分(92-860) p=0.048), 術後在院日数(12日(5-75)/12日(6-100))と, 導入後に手術時間が36分短縮した. 再肝切除における有意差はなく, 術式別では亜区域切除で43分短縮した. ii) 膵切除においては, Lap-DPで膵の釣り上げ後の脾動静脈の同定に, 胆嚢切除では, 内臓脂肪の多い症例での胆嚢挙上後のCalot三角の展開に, 胃切除では, Lap-DGで内臓脂肪の多い症例でのリンパ節郭清部位の各血管の同定に, LSは有用であった. 胃切除ではモニターに重畳表示する術中ARナビゲーションとしても有用であった. iii) 手術時間(SV群326分(139-609)/LS群275分(219-633)), 出血量(100ml(0-940)/103ml(0-1,440)), 術後在院日数(7日(6-13)/9日(7-10))において両群に有意差はなく, LSはSVと比較して非劣性であった. iv) 予備実験では3D肝臓プリントモデルを使用した. 3Dカメラにより臓器を計測し, 3D点化したデータをシミュレーションソフトのデータと比較し, アフィン変換行列(4×4行列)を計算し位置合わせを行った. マーカー化ガーゼを利用することで, 画像からの臓器抽出, およびサイズ計測が容易となった.
【結論】手術シミュレーション等のコンピュータ支援手術は様々な臓器に有用であり, 今後の真のナビゲーションの開発も期待される.