演題

消化器外科におけるNCDを活用した研究課題の成果と今後の展開

[演者] 掛地 吉弘:1
[著者] 後藤 満一:2, 今野 弘之:2, 宮田 裕章:2, 瀬戸 泰之:3
1:日本消化器外科学会データベース委員会委員長, 2:日本消化器外科学会データベース委員会アドバイザー, 3:日本消化器外科学会理事長

2011年から登録が開始されたNational Clinical Database (NCD)は6年が経過し,メガデータベースとして成果の活用が進んでいる.
消化器外科領域では米国のAmerican College of Surgeons National Surgical Quality Improvement Program (ACS-NSQIP)との連携のもと,医療水準評価対象術式(主たる8術式)の2011年登録症例約12万例を用い,8術式の死亡率のリスクモデルを構築した.このモデルを用い自施設のリスク調整死亡率を全国と対比し,医療の質向上に向けたベンチマーキングレポートや,症例ごとの術前リスクの算出による診療チームのサポートなどのフィードバック機能が稼働している.さらに2011,2012両年のデータを用いて,8術式に関する合併症に対するリスクモデルの論文化が進んでおり,今後利用可能となる.
臨床現場における様々な課題にALL JAPANのデータとして応えるべく,NCDのデータを利活用した臨床研究を2013年より開始した.日本外科学会,および「消化器外科データベース関連学会協議会」に参加する学会または研究会を含む12の関係団体から研究課題を公募し,その進捗を援助してきた.4年間で29件が採択されている.研究の成果は次々に論文化されている.食道切除後のリスク調整死亡率を用いた施設間格差の検討では,年間手術数の多い施設の成績が良好であった(Nishigori et al., Br J Surg 2016).また,専門医関与の観点から見ると,主たる8術式全てにおいて,施設に在籍する専門医が一定数以上いることが手術成績を良好にしていた(Konno et al., Surg Today 2016).
登録されたデータの品質管理の面からは,「NCDに登録されたデータ」と「入力元となったカルテ等の資料」を照合する監査 (audit)も必要とされる.2016年から消化器外科専門医制度指定修練施設を対象として一定の割合で施設訪問するauditを開始した.
NCDを活用することで,消化器外科診療の改善に向けた課題を同定し,合併症発生率の低下,入院期間の短縮など,医療の質の向上や医療コストの低下に寄与することが期待される.
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