演題

WS11-9

肝細胞癌のoncologic emergency-下大静脈腫瘍栓に対する治療戦略

[演者] 笠井 洋祐:1
[著者] 田浦 康二朗:1, 瀬尾 智:1, 奥野 将之:1, 西尾 太宏:1, 安近 健太郎:1, 岡島 英明:1, 海道 利実:1, 上本 伸二:1
1:京都大学大学院 肝胆膵・移植外科学

【目的】肝細胞癌の下大静脈腫瘍栓は,advanced stageと位置付けられる脈管侵襲の中でも最も予後不良な病態と考えられている.さらに,下大静脈腫瘍栓は肝静脈流出路閉塞による急性肝不全,肺塞栓症,急性循環不全などの致死的合併症をきたし得るoncologic emergencyの病態でもある.致死的合併症の予防とともに長期予後を担保するための集学的治療による管理が求められる.当院における下大静脈腫瘍栓に対する治療戦略がoncologic emergencyの病態管理,長期予後へ与える影響について明らかにする.
【方法】1996年から2015年に当院で下大静脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対して切除を行った41例および非切除治療を行った21例を対象とした.2002年以前は下大静脈腫瘍栓の致死的合併症予防を目的として原則的に切除を第一選択としてきたが,2003年以降は肝外転移,体外循環の使用が見込まれる腫瘍栓,肝機能不良,両葉多発腫瘍を伴う高度進行下大静脈腫瘍栓症例に対して肝動注化学療法を中心とした術前治療を導入している.2002年までを前期 (切除24例,非切除4例),2003年以降を後期 (切除17例,非切除17例)と分類した.下大静脈腫瘍栓に伴う合併症,長期成績について検討した.
【成績】診断時に肝静脈流出路閉塞に伴う急性肝機能障害は後期の3例,無症候性の肺動脈腫瘍塞栓を後期の1例に認めた.いずれも肝動注化学療法を施行し,肝静脈流出路閉塞の1例,および画像上肺動脈腫瘍栓の消失が認められた1例で治癒切除が可能となった.非切除となった肝静脈流出路閉塞2例を含め,非切除症例で治療開始から30日以内の突然死は認めなかった.術前治療により3例で肝外転移が消失し,1例で右房内腫瘍栓の縮小により体外循環の使用を回避できた.切除症例の生存期間中央値は前期8.3カ月,後期36.4カ月 (P = 0.006),無再発生存期間中央値は前期2.8カ月,後期7.1カ月 (P = 0.002)と後期で有意に改善していた.全生存期間に対する多変量解析では,術前治療の施行 (ハザード比0.27),体外循環の使用 (同2.78),肝外転移 (同2.55)が独立予後因子となった.後期非切除症例の生存期間中央値は7.7カ月であり,前期切除症例と比べ遜色がなかった.
【結論】下大静脈腫瘍栓に対する致死的合併症回避を目的とした性急な手術では長期予後は担保できない.肝動注化学療法を中心とした術前治療でoncologic emergencyの病態は管理可能であり,切除症例の長期予後改善にも寄与する.
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