演題

ME-B-10-3

膵管内乳頭粘液性癌による膵管狭窄から発生した巨大膵仮性嚢胞の1切除例

[演者] 矢崎 海:1
1:自治医科大学附属さいたま医療センター 一般・消化器外科

症例は67歳女性.腹部外傷や膵炎の既往歴なし.3ヶ月前から腹部膨満,食欲不振,下腿浮腫を自覚.その後も症状増悪し,前医受診.腹部超音波検査,腹部単純CT検査で腹腔内を占拠する30cm大の巨大嚢胞性病変を指摘され,精査加療目的に当院紹介となった.腹部造影CTで膵尾部に30mm大の辺縁不整,内部不均一な造影効果を伴う充実性腫瘤を認め,その尾側膵から連続するような巨大嚢胞性病変を認めた.壁は造影効果に乏しく,内部は比較的均一な低吸収域であった.嚢胞は上腹部から骨盤に達し,胃を右側に高度に圧排し,膵頭部近傍で下大静脈を圧排,これにより下大静脈は狭小化していた.多量の腹水と下腹部から下肢にかけての著明な皮下浮腫も認めた.MRIでは膵尾部腫瘤はT1WI,T2WIともに内部不均一な低信号腫瘤として描出され,嚢胞性病変はT1WIで低信号,T2WIで内部ほぼ均一な高信号を示していた.ERPでは主膵管の軽度拡張を認めるのみで,嚢胞との交通は明らかでなく,膵液細胞診からは悪性所見は認められなかった.ENPDチューブ留置しドレナージを試みるも嚢胞縮小なく,腹痛と発熱,炎症反応の上昇を認め,嚢胞内感染が示唆された.膵尾部腫瘤と下大静脈症候群を伴う巨大膵嚢胞に対して手術を行った.嚢胞は網嚢内を占めるように存在し,周囲臓器と癒着,圧排性に発育,右側に偏位した胃の背側から小網側に回り込み腹側に進展していた.また,膵尾部腫瘤の尾側から導管を介して膵管と連続していた.膵尾部腫瘤を切除範囲に含め膵体尾部切除術を行った.巨大嚢胞内容液は混濁しており感染が疑われ,アミラーゼ値は145 IU/lであった.病理組織学的検査では,膵尾部腫瘤は分枝型の膵管内乳頭粘液性癌(IPMC)で,その尾側膵から導管を介して膵仮性嚢胞が発生していた.
本症例では,膵尾部に発生したIPMCにより膵管が狭窄/閉塞し,その尾側の膵管内圧が上昇,膵仮性嚢胞を発症し,胃や下大静脈を圧排し,食思不振や腹水貯留,浮腫を来したと考えられる.医中誌で検索した限り,IPMN(IPMC)により腹腔内を占めるような巨大膵仮性嚢胞を発症し,さらに嚢胞の圧排により下大静脈症候群を呈した報告例はなく,本症例が1例目である.
今回われわれは,まれな,周囲臓器圧排症状を伴う,膵尾部分枝型膵管内乳頭粘液性癌に合併した巨大膵仮性嚢胞の1切除例を経験したので報告する.
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