演題

ME-A-10-6

腹膜切除により完全切除しえた卵巣原発Growing Teratoma Syndromeの一例

[演者] 後藤 祐子:1
1:草津総合病院 一般・消化器外科・内視鏡科

Growing Teratoma Syndrome(以下GTS)とは,非精細胞性胚細胞性腫瘍の初回切除術後の化学療法施行中や施行後に増大傾向を示す腫瘍を認めるものの,病理学的には良性で,腫瘍マーカーは正常値を示すきわめて稀な疾患である.卵巣原発のGTSは現在までに世界で60例ほどの報告しか見られない.再発部位は,腹腔内,特に骨盤腔内の頻度が高いが,様々な部位に出現することが報告されている.一般に良性ではあるものの腫瘍は急速に増大し,周囲組織を圧迫,尿管閉塞や腸閉塞などの症状を引き起こし,3%-5%で悪性転化も報告されている.GTSの腫瘍は,化学療法抵抗性,放射線治療抵抗性で,現時点での標準的治療は外科的切除とされている.完全切除できた場合の予後は良好であるが,病変が広範に腹膜播種をきたした場合の完全切除は困難である.近年,Sugarbakerが腹膜播種に対する手術として,広範な壁側腹膜切除に種々の臓器切除を組み合わせて腹膜播種病変の完全切除を行う手技を開発し,種々の腹膜播種疾患に対する有効な治療法として認知されるようになってきた.今回,我々は卵巣原発の未熟奇形腫の術後化学療法中に再発し,広範な腹膜播種をきたしたが,腹膜切除により完全切除しえたGTSの症例を経験したので報告する.
症例は45歳女性.腹部膨満感を主訴に近医を受診.非精細胞性胚細胞性腫瘍の一つである未熟奇形腫を疑われ,子宮全摘,両側付属器切除が施行された.病理検査にて未熟奇形腫Grade3,StageⅢBと診断され,術後化学療法を施行された.初回手術から7か月後に腹腔内に再発し,種々の化学療法を施行したが,転移病変の増大を認めたため,初回手術から4年後に手術目的で当院に紹介となった.手術所見では,直腸壁からS状結腸壁,左横隔膜下腹膜のみを除いた壁側腹膜の全てに大量の結節性充実性の腫瘤が存在しており,直腸と胆嚢切除を含む広範囲の腹膜切除術にて腫瘍の肉眼的完全切除を行った.病理検査では未熟組織や異型細胞の増生は認められず,成熟奇形腫の所見であった.臨床経過とあわせて,未熟奇形腫が化学療法により成熟化したGTSと確定診断された.今回,腹膜切除により完全切除しえた卵巣原発のGTS症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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