演題

ME-A-10-2

腹壁に発生した神経鞘腫の1例

[演者] 笠巻 敬太:1
1:日本大学病院 消化器外科

【はじめに】神経鞘腫はあらゆる末梢神経に発生するとされているが,頭頚部,脊髄,四肢に発生することが多く,腹壁に発生すること比較的まれである.今回腹壁に発生した神経鞘腫を腹腔鏡下に切除した1例を経験したので報告する.
【症例】60代男性.(主訴)特になし.(既往歴)高血圧,高脂血症.(血液生化学検査)特記すべき異常なし.(経過)高血圧,高脂血症で当院内科通院中,定期検査の腹部超音波検査で13mm大の胆嚢ポリープと肝S5前面の腹壁に30mm大の円形の腫瘤を認めた.造影CT検査で腹壁腫瘍は表面平滑で境界明瞭な内部不均一な造影効果を認める腫瘤であり,確定診断に至らず,診断と治療目的に腹腔鏡下に胆嚢摘出術とともに腹壁腫瘤切除を同時に行った.術中所見で腹壁腫瘤は表面平滑であり腹腔外に存在した.一部肋骨と線維性の癒着を認めたが腹膜とともに全周性に切除しえた.腫瘤の切除は胆嚢摘出と同視野で行うことができ,被膜を損傷することなく約20分で終了した.肉眼所見で腫瘍は被膜を有する黄白色の充実性腫瘤で内部に出血,液状変性を認めた.病理組織学的検査では境界明瞭な紡錘形細胞の増殖を認め,免疫染色でS-100蛋白陽性,c-kit陰性であり神経鞘腫と診断された.術中所見と病理所見を合わせると腫瘤は肋間神経の末梢から発生したものと考えられた.術後経過は問題なく術後4日目に退院となった.
【考察】後腹膜に発生する神経鞘腫は0.7%と稀であるが,中でも腹壁に発症した神経鞘腫はさらに稀である.また,後腹膜に発生する神経鞘腫はかなりの大きさになるまで自覚症状が出ないことが多く,検診などで偶然発見されることが多い.本症例でも腹壁の腫瘤は画像上認めていたが自覚症状はなく,増大傾向もなかった.腹壁疾患の鑑別疾患として良性疾患ではデスモイド,繊維腫,脂肪腫など,悪性疾患では転移性腫瘍,横紋筋肉腫,平滑筋腫,脂肪肉腫などが考えられるが画像のみでの診断が困難なことが多い.また,神経鞘腫はPETで高集積を認めるという報告もあるが良悪性診断は困難である.以上より腹壁腫瘤を認めた場合,特に症状がなくても画像所見だけでは診断が難しいことが多いため,診断目的に切除を検討するべきである.
【結語】腹壁に発生した神経鞘腫を経験した.
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