演題

ME-B-8-7

腹腔鏡下胆嚢摘出術後に肝被膜下血腫をきたした1例

[演者] 猿渡 和也:1
1:神戸赤十字病院 外科

【緒言】腹腔鏡下胆嚢摘出術は,胆嚢結石症,胆嚢炎といった良性胆道疾患の標準治療として広く行われている.今回我々は,腔鏡下胆嚢摘出術後に肝被膜下血腫を発症した極めて稀な症例を経験したので報告する.
【症例】50歳女性.既往に直腸癌等により3度の腹部手術歴がある.2016年8月,発熱,右季肋部痛,嘔吐を主訴に来院.血液検査にて肝胆道系酵素の上昇(T.bil 2.6mg/dL,AST/ALT 808/721IU/L,γ-GTP/ALP 543/779IU/L)および汎血球減少(WBC 3000/μL,Hb 10.1g/dL, PLT 9.9万/μL)を認めた.腹部USおよびCTにて,総胆管結石は認めなかったが,胆嚢結石,胆嚢壁の浮腫性の不整な肥厚,周囲脂肪織濃度上昇,胆嚢周囲動脈の血流途絶を認め,総胆管結石陥頓解除後,壊死性胆嚢炎と診断された.また肝,胆嚢周囲,骨盤に腹水を認めた.ERBD tube留置後,同日,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術中所見では,壊死性胆嚢炎には至っておらず,手術時間2時間54分,出血量少量,特記事項なく手術は終了した.術後3時間で上腹部痛が出現し,AMY 1419IU/Lと上昇しておりERCP後膵炎が疑われ,輸液,抗生剤による保存的加療を開始した.この時点ではHb 8.9g/dLであったが,翌日Hb 6.5 g/dLまで低下しており,造影 CTにて肝胆嚢床部に10cmの肝被膜下血腫および血腫内へのextravasation(責任血管:A5分枝)を認めたため,TAEを施行した.血管造影では明らかなextravasationは認めず,術前に出血が疑われたA5分枝を塞栓.また前・後区域枝を若干血流が低下する程度に塞栓した.術後4日目にHb 4.8g/dLと再度貧血が進行し,CTにて血腫は11cmと軽度増大を認めたが,輸血などの保存的加療を行った.TAEに伴う一過性の肝胆道系酵素の上昇を認めたが,画像上の血腫増大および貧血の進行はなく,術後32日目に退院した.現在術後3ヵ月経過しているが,血腫は7cmに縮小し,症状なく経過している.
【考察】腹腔鏡下胆嚢摘出術後の肝被膜下血腫は極めて稀であるが,生じると致命的となり得る合併症である.原因としては,術中に胆嚢を過剰に牽引することで肝臓に捻転力が生じ,肝被膜下血腫を来す可能性が指摘されている.臨床経過とともに若干の文献的考察を加え報告する.
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