演題

ME-B-8-6

腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した胆嚢捻転症の一例

[演者] 谷村 史人:1
1:岩手県立中央病院

【症例】90歳女性
【既往歴】白内障手術(69歳時),骨粗鬆症
【主訴】腹部膨満感,右側腹部痛
【現病歴】2016年4月,下腹部の張りを自覚したため近医受診.腹部超音波で胆嚢壁の著明な肥厚と圧痛を認め急性胆嚢炎疑いで当院消化器内科へ紹介
【腹部所見】亀背,右季肋部に圧痛あり,明らかな腹膜刺激症状なし

胆嚢捻転症あるいは急性胆嚢炎の疑いで絶食・輸液・抗生剤で保存的加療を開始した.入院2日後,保存的加療にて炎症所見増悪し右季肋部から側腹部にかけて自発痛,圧痛が生じた.腹膜刺激症状はなかった.したがって腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.
【手術所見】
腹腔内は亀背のため視野が非常に狭い状態であった.胆嚢表面は大網で覆われており,癒着は比較的疎であったため鉗子で露出させた.胆嚢は暗赤色に腫大し緊満していた.遊走胆嚢であり,胆嚢管近傍で360°時計回りに捻転していたため鉗子で捻転を解除した.胆嚢を挙上し,胆嚢動脈,胆嚢管を処理すると,胆嚢は肝床部と膜のみで付着していた.周囲との癒着はほとんどなかったため,それを剥離した後胆嚢を摘出した.
【考察】
胆嚢捻転症とは肝床部との固定が不十分である遊走胆嚢のため,胆嚢頸部や胆嚢管で捻転を起こし血行障害をきたすものであり,場合によっては急激な壊死性変化が生じる疾患である.捻転が180度以下で 自然解除の可能性のある不完全型と,180度以上で自然解除の可能性がない完全型に分けられる.遊走胆嚢にはGross分類が存在し,胆嚢と胆嚢管が間膜により肝下面に付着するⅠ型,胆嚢管のみ間膜に付着しているⅡ型がある.
疫学は男女比が1:3であり,高齢の痩せた女性に好発するといわれている.先天的要因として遊走胆嚢が挙げられ,後天的要因として腹腔内圧急変,加齢による脂肪組織・弾性線維の減少,亀背などが挙げられる.
捻転による臓器虚血で急激な全身状態の悪化が予想されるため,胆嚢捻転症は手術が第一選択とされている.本症例において,術前診断で胆嚢捻転症を考えたが臨床所見に乏しく,不完全型の捻転症であれば自然解除の可能性もあるため,手術ではなく保存的加療を最初に選択した.今回経験した症例は遊走胆嚢,高齢女性,痩せ型,亀背であった.亀背により視野の確保が難しかったが,遊走胆嚢は肝床部との癒着が軽度で,剥離が容易であったため実際に腹腔鏡下で手術が可能であった.
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