演題

ME-A-8-5

腹壁瘢痕ヘルニア整復後に癒着性腸閉塞との鑑別に難渋した虚血性小腸閉塞の1例

[演者] 椎名 美季:1
1:済生会宇都宮病院 外科

小腸は比較的側副血行路が発達しているために,血行障害は起こりにくいとされている.今回,われわれは腹壁瘢痕ヘルニア整復後に遅発性の虚血性小腸閉塞に至った症例を経験したので,報告する.
症例は69歳女性.約10年前に子宮癌に対して子宮全摘術を施行し,術後1年目より創部の腹壁瘢痕ヘルニアを認めていた.今回,1ヶ月前からヘルニア脱出時の腹痛を認めるようになり,当院を受診.腹部造影CT検査にて小腸がヘルニア門に嵌頓する所見を認め,一週間後に待機的に腹壁瘢痕ヘルニア根治術を施行した.
術後4ヶ月間の間に4回の腸閉塞を認め,入院加療を行った.癒着性腸閉塞の診断で保存的加療を行い,短期的に軽快したが繰り返す腸閉塞のため,手術の方針とした.腹壁瘢痕ヘルニア初回手術から約半年後に小腸部分切除を伴う腸閉塞手術を施行した.手術所見では,癒着正中創直下に大網が軽度癒着していた.回腸末端から約50cm小腸にnarrow segmentを認め,この部位が閉塞機転として考えられた.狭窄腸管を15cm認め,口側拡張腸管も10cm程度漿膜が瘢痕化しており,蠕動不良が疑われた.
術後は概ね良好に経過し,17病日に退院となった.
部分切除した回腸の病理組織診断では,狭窄部位に一致して,open ulcerと肉芽組織,粘膜下層~漿膜下層にかけての繊維化が認められた.繊維化は粘膜下層で特に強く,瘢痕化を認め,虚血性変化が示唆された.
本症例は,腹壁瘢痕ヘルニア嵌頓により回腸の虚血状態が慢性的に生じ,同部位が瘢痕化し狭窄を起こしたものと推察された.瘢痕化後も完全閉塞をきたすことなく,腸閉塞の寛解と増悪を繰り返したため癒着性腸閉塞との鑑別が非常に困難であったものと考える.
詳細と,若干の文献的考察を含めてこの症例を検討する.
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