演題

ME-A-3-5

術中に発見された腸回転異常症を伴う胃癌患者に対し,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した1例

[演者] 浅井 沙月:1
1:京都大学附属病院 消化管外科

【はじめに】
腸回転異常症は胎生期の中腸回転不全に起因し,多くが小児期までに発見される先天異常である.一方成人で発見される回転異常症は稀であり,消化管悪性腫瘍手術時などに偶然発見されることもある.今回,術中に発見された腸回転異常症を伴う胃癌症例を経験したので報告する.
【症例】
生来健康な59歳女性.胃体中部後壁の0-Ⅱc型印環細胞癌で,cT1bN0M0,cStageIBの胃癌に対し,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.
【手術所見・経過】
網囊を開放し,型通りLGEAを切離.#6リンパ節郭清に移るも,横行結腸間膜がはっきりせず.膵臓が鉤状形成せず十二指腸に付着し続け,郭清のlandmarkの確認が困難であった.膵臓との境界を意識し,十二指腸間膜を切開し膵臓から郭清組織を切離.幽門へ走行する動静脈を処理して#6の郭清を終了したが,十二指腸から膵臓が剥がせず,Billroth-Ⅰ法再建は断念.十二指腸離断後,小弯側リンパ節郭清を型通り施行し胃を切離.Roux-en-Y再建を選択したが,再建時にTreitz靭帯を発見できず,小腸の右側集簇や上行結腸の後腹膜未固定が見られ,腸回転異常症合併と判明.Ladd靭帯ははっきりせず,これによる腸管絞扼所見や傍十二指腸ヘルニアは認めず.下十二指腸曲より20cm肛門側の,右側にある空腸を離断挙上し残胃と機能的端々吻合にてRoux-en-Y再建.挙上空腸間膜と膵臓前面被膜とを縫合し内ヘルニアを予防した.Ladd靭帯切離や予防的虫垂切除術は施行せず.術中・術後に再度術前CT画像を確認し,術前に気づかなかった腸回転異常があることを確認した.術後は合併症なく経過良好にて退院.
【考察】
今回,術前診断ができなかった腸回転異常合併胃癌症例を経験した.回転異常を伴う#6リンパ節郭清ではlandmarkの確認が困難だが,幽門へ向かう血管と膵臓との境界を意識することで,安全に過不足のない郭清が施行できると考える.また,再建において十二指腸と膵臓の伴走が続いたためBillroth-Ⅰ法以外を選択し,いわゆるPetersen's defectに相当する間隙は小腸間膜と膵臓前面被膜との愛護的な縫縮により閉鎖が可能であった.
癌症例における術前の画像診断では,腫瘍学的評価のみならず解剖学的変異の有無についても把握すべきであるが,術中に解剖学的破格を認める際には再度画像を確認し,それに即した対応が重要であると考えられた.
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