演題

ME-A-1-6

心臓転移をおこした食道胃接合部腺癌の1症例

[演者] 泉家 匠:1
1:東京女子医科大学病院 消化器外科

食道胃接合部腺癌の心臓転移の症例を経験したため報告する.症例は60代男性で, 2014年5月に食道胃接合部腺癌に対し 左開胸開腹下に下部食道及び噴門側胃切除術, 所属リンパ節郭清術を施行していた.病理所見は低分化腺癌でT3N0M0 stageIIB, ly1, v2, PM0, DM0, Her2は1+であった.術後は転移再発を認めずに経過していたが,2016年5月頃から労作時の 息切れが出現し, 徐々に増悪して安静時にも息切れ, 倦怠感を感じるようになった.7月の心電図でV2-4のST上昇を認め, 心エコー, 胸部CT検査を施行したところ心室中隔から心尖部の壁肥厚と内部に浸潤性の腫瘍を認めた.炭水化物制限下 のF-FDG PET/CT検査で同部に集積を認めたが,その他の部位に病変を示唆する集積は認めなかった.冠動脈造影検査 で前下行枝遠位側の途絶を認めた.心室中隔からの生検は低分化癌の所見で, 食道胃接合部癌の手術病理所見と同様で あった.免疫染色でCK7陽性, CK-20陰性であり, calertinin, WT-1, podoplaninは陰性で悪性中皮腫が否定されたため, 食道 胃接合部腺癌の転移と診断した.治療は,外科的切除は不可能と判断し,強度変調放射線治療を50グレイ施行した.照 射期間の後半より症状はNYHA分類でIVからIまで軽快したが,心エコー検査, 胸部CT検査で腫瘍サイズは治療前と変わ りなかった. 急性の放射線副作用はなく, 照射終了後退院となり経過観察となっている. 悪性腫瘍の心臓転移は剖検例では癌患者の9%程度にみられるとの報告があるが, 生前に診断されることは稀である.多 くの場合,心臓転移は全身転移の終末像として起こり, 胸部症状や心機能低下など臨床的に問題になることが少ない事, 画像検査で発見しにくい事が原因と考えられる.しかし,治療の進歩に伴い今後本症に対し治療を要する機会が増える 可能性がある.今回,放射線療法は緩和医療として有効であると考えられた一方, 化学療法薬剤は放射線治療併用で心 毒性が増強するものが多く, 治療戦略の検討が必要と考えられた.
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