演題

ME-A-1-3

食道裂孔ヘルニアに嵌頓した横行結腸が穿孔をきたし,緊急手術により救命を得た1例

[演者] 室岡 和樹:1
1:佐渡総合病院 外科

【はじめに】
食道裂孔ヘルニアは高齢化に伴い,今や日常臨床でも高頻度に遭遇する疾患である.今回われわれは食道裂孔ヘルニアにより縦隔内へ横行結腸が脱出,嵌頓から穿孔をきたし,緊急手術により救命を得られた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】
症例は80歳,女性.心窩部痛と嘔吐を主訴に救急外来へ搬送された.腹部は上腹部を中心に圧痛著明であり,板状硬であった.CT検査を行うと,食道裂孔ヘルニアにより胃と横行結腸が縦隔内に脱出しており,横行結腸周囲に便塊の脱出を疑う異常構造と遊離ガスを認めた.これらの所見から,食道裂孔ヘルニア内に脱出した横行結腸の穿孔を疑い,緊急手術を施行した.開腹所見では腹腔内に汚染は認めなかったが,食道裂孔より嵌頓している胃,横行結腸を引き出し,網嚢を開放したところ,便汁の流出とともに横行結腸に穿孔部を認めた.穿孔部を含めて横行結腸を部分切除し,口側結腸は腹壁外に拳上し人工肛門とした.腹腔内を十分に洗浄した後,経胃的空腸瘻の造設を行い,ドレーンを留置して手術を終了とした.術後は集中治療を要し,早期から経胃的空腸瘻より経腸栄養を行った.全身状態は次第に改善を認め,最終的には経口摂取も可能となり軽快退院となった.病理所見では穿孔部に憩室や腫瘍の存在は認めず,血流障害による腸管穿孔の所見に矛盾しなかった.
【考察】
食道裂孔ヘルニア内への脱出臓器は,胃が一般的であるが,その周辺臓器である横行結腸が嵌頓まできたすことは稀な病態と考えられる.またヘルニア内での結腸穿孔では,高度な縦隔炎をきたすことが予想されるが,本例では穿孔による汚染が,網嚢内に被覆され限局していたことも,重症化を防いでくれた要因と考えられた.食道裂孔ヘルニアに対する手術では,一般的に横隔膜縫縮術やメッシュ修復術が考慮されるが,本症例では消化管穿孔を伴う緊急手術であり,ヘルニア修復術は施行しなかった.しかし,胃を腹壁に固定する経胃的空腸瘻を造設したことは,術後の栄養管理目的にとどまらず,胃全体のヘルニア内への脱出予防を期待したものであった.
【結語】
本例は稀な病態ではあるものの,高齢者においては重症化をきたし不幸な転帰をとることも考えられ,精度の高い画像診断から早急に適格な治療に踏み切ることが肝要と考えられた.
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