演題

WS09-7

切除可能膵頭部癌における術前化学放射線療法の有用性に関する検討―PSM法による2施設共同研究の解析より―

[演者] 森本 大士:1
[著者] 藤井 努:1, 里井 壯平:2, 山田 豪:1, 室谷 健太:3, 柳本 泰明:2, 高見 秀樹:1, 山本 智久:2, 權 雅憲:2, 小寺 泰弘:1
1:名古屋大学大学院, 2:関西医科大学医学部 外科学, 3:愛知医科大学医学部

《背景》
切除可能膵癌における術前化学放射線療法(NACRT)の有効性に関する報告は散見されるが,そのエビデンスは確立されていない.

《対象・方法》
2001年1月~2013年12月までに当教室および関西医科大学外科学講座にて切除可能膵頭部癌と診断され,根治切除を企図した手術先行群(2007年以前: 233例)とNACRT群(2008年以降: 40例)を解析対象とした.NACRTは放射線療法(50.4 Gy/28 fr)にS-1(80/mg/m2/day)を2週間投与・1週間休薬の計2コースを併用して施行した.両群間における臨床病理学的因子・術後生存成績の比較検討のため,Propensity score matching(PSM)法により解析を行った.

《結果》
両群間において術前併存疾患,BMI,CA19-9値には差を認めなかった.NACRT群は術前治療後において有意なCA19-9値低下(143 vs. 48 U/mL; P = 0.017),治療前後腫瘍径に縮小を認めた(29 vs. 24 mm; P < 0.001).また,治療拒否した1例を除き,病状進行を認めず手術へ移行可能であった.手術先行群: 204例(88.0%),NACRT群: 36例(90.0%)が治癒切除可能であった.治癒切除率,術中出血量,門脈合併切除率,リンパ節郭清個数には差を認めなかったが,NACRT群にて手術時間の延長を認めた(440 vs. 525 min; P < 0.001).術後合併症発生率,再手術率,周術期死亡率は同等であった.リンパ節転移率は,NACRT群にて有意に減少していた(71 % vs. 39 %; P < 0.001).全再発率は同等であったが,遠隔転移再発の割合はNACRT群にて有意に増加していた(49 % vs. 76 %;P = 0.022).PSM法による解析では,NACRT群における手術時間延長(P = 0.006),術中出血量増加(P = 0.039),リンパ節転移率の減少(P = 0.024)を認めた.疾患特異的生存期間中央値は手術先行群で33.7ヶ月,NACRT群で28.6ヶ月であり有意差を認めなかった(P = 0.960).

《考察》
切除可能膵頭部癌に対するNACRTは,手術時間の延長・出血量の増加を認め,手術の難易度を上昇させている可能性がある.また,リンパ節転移率を下げるが遠隔転移再発例が増加しており,生存期間延長に寄与しなかった可能性がある.現状では切除可能膵頭部癌に対するNACRTは推奨されない.
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