演題

ME-A-1-2

口腔内環境の評価と消化器術後合併症リスクに関する臨床的検討

[演者] 西川 真央:1
1:脳神経疾患研究所附属総合南東北病院 外科

【背景】消化器術後の感染性合併症予防として口腔機能管理の重要性が注目され,2012年からは周術期口腔機能管理加算が開始されている.周術期の口腔機能管理は主に食道癌術後の肺炎などの感染性合併症を予防する効果が認められているが,その他の消化器手術に対する効果は不明な点が多い.そこで,今回,胃癌・大腸癌患者を対象に術前の口腔内環境と術後合併症の発生リスクについて後方視的に検討した.【対象と方法】2016年1月から8月に当科で手術を行った胃癌・大腸癌患者のうち,術前に口腔外科を受診し口腔内環境の評価を受けた171例.調査項目は,患者背景,術式および術前の歯周病重症度,口腔清掃状態,口腔乾燥,舌苔付着,残根とした.歯周病重症度は歯周治療の指針2015に準拠し,最も歯周ポケットの深い歯牙について3段階で評価し記載した.無歯顎の患者は評価対象外とした.その他,口腔清掃状態(Silness & LoeらPlaque Indexにて評価),乾燥の有無,舌苔の有無,残根の有無を調査した.アウトカムはClavien-Dindo分類Grade I以上の術後感染性合併症とし,上記口腔内環境との関連について検討した.【結果】対象の平均年齢は67.1歳(±11.2),性別は男:女=109:62.施行術式は胃全摘:幽門側胃切除:結腸切除:直腸切除:その他で,それぞれ41:16:56:43:15例であった.歯周病の重症度別の術後感染性合併症発生割合は軽度歯周病:中等度歯周病:高度歯周病で0/16 (0%):7/99 (7.1%):8/29 (27.6%) (p=0.002)であり,重症度と発生割合に関連を認めた.口腔清掃状態は,良好:不良で6/65 (9.2%):11/86 (12.8%) (p=0.49),口腔乾燥は,乾燥なし:ありで16/150 (10.7%):1/2 (50%) (p=0.08),舌苔付着は,舌苔なし:ありで16/145 (11%):1/7 (14.3%) (p=0.79),残根は,残根なし:ありで16/141 (11.4%):5/30 (16.7%) (p=0.42)であった.【結語】術前に歯周病が進行していた症例では術後感染性合併症の発生割合が有意に高かった.術前の口腔内評価における歯周ポケットの深さの計測は,術後感染性合併症の発生の予測因子となり得る.また,その他の要因においても有意な差を認めなかったものの全体の傾向として口腔内環境が悪い症例では術後の感染性合併症発生のリスクがより高いと考えられた.今後は,口腔ケアなどの介入が消化器術後の感染性合併症予防に有効かどうか検討する予定である.
詳細検索