演題

PO17-2

門脈・上間膜静脈血栓症を合併した急性虫垂炎の1例

[演者] 谷 悠真:1
[著者] 水野 憲治:1, 池田 秀明:1, 加藤 大:1, 山村 方夫:1, 小寺 正人:1, 大石 正博:1
1:鳥取市立病院 外科

門脈・上腸間膜静脈血栓症の原因として肝硬変に続発する症例が多く,手術関連であれば肝切除術後,脾摘術後などに続発することが知られている.頻度は低いが腹腔内炎症・血栓性素因・外傷などの要因により生じることも報告されており急性虫垂炎に続発する症例は稀である.今回我々は広範囲に門脈・上間膜静脈血栓症を合併した急性虫垂炎の1例を経験したので報告する.【症例】30代男性.2週間前からの腹痛を主訴に当院受診.腹部造影CTを施行し膿瘍形成性虫垂炎と診断し,また同時に肝内門脈後区域枝~門脈本管~上腸間膜静脈~回結腸静脈,空腸静脈まで広範囲に血栓を認めた.CT上門脈本管は完全閉塞している様に観察し得たが,門脈左枝・前区域枝は良好に造影されていた.interval appendectomyの可能性も考慮したが,腹腔内の炎症が血栓症の原因である可能性あり早期の局所炎症コントロールが必要と診断し緊急開腹虫垂切除術を施行した.血栓症に対してはPTE/DVTの治療に関するガイドラインを参考に,APTT 値は1.5倍~2.5倍に延長,PT-INRは1.5~2.5を目標に抗凝固薬の調節を行い治療を実施する方針とした.またヘパリン投与前に血栓性素因のスクリーニング検査を施行したが異常は認めなかった.術後1日目よりヘパリン持続点滴を開始,術後5日目よりワーファリン内服を併用し抗凝固療法を行った.術後9日目よりワーファリン単独にて治療継続とした.術後17日目に造影CTを施行したところ血栓は縮小傾向であったが空腸静脈の拡張は増悪,また小腸は回腸を中心に軽度びまん性の壁肥厚が認められた.腸管壁の造影効果は良好であった.さらに右半結腸領域のmarginal veinから膵頭部周囲の静脈を介し門脈系への著名な側副血行路の急速な発達を認めた.発熱,腹部症状の出現なく,PT-INRも治療域で維持できており術後22日目に退院された.現在も外来にて加療継続中である.【考察】本症例は血栓性素因は認められず急性虫垂炎が原因で門脈・上間膜静脈血栓症を発症したと考えられた.過去の症例報告では本症例と同様に初診時に高度炎症を伴う虫垂炎や術後遺残膿瘍に伴い門脈・上腸間膜動脈血栓症を発症した症例が散見される.近年膿瘍形成を伴った急性虫垂炎に対してinterval appendectomyが実施される機会が多くなり良好な成績が報告されているが,初診時や経過観察中に稀ではあるが門脈・上腸間膜静脈血栓症を合併する可能性もあり留意が必要と考えられた.
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