演題

PO17-1

腹腔鏡下回盲部切除後に上腸間膜静脈血栓症を発症した1例

[演者] 横山 航也:1
[著者] 大多和 哲:1, 清水 善明:1, 近藤 英介:1, 西谷 慶:1, 伊藤 勝彦:1, 清水 公雄:1, 尾内 康英:1, 中田 泰幸:1, 石井 隆之:1
1:成田赤十字病院 外科

【はじめに】上腸間膜静脈血栓症(SMVT)は比較的稀な疾患であるが,重篤化し腸管壊死をきたす場合もある.今回,上行結腸癌で手術を施行し,術後にSMVTを発症したが,抗凝固療法による保存的治療により軽快した症例を経験した.
【症例】65歳男性,スクリーニングの大腸内視鏡で上行結腸に15mm大のIIa病変(中分化腺癌)を指摘された.下肢静脈血栓症の既往があったが,血管エコーでは血栓は指摘されなかった.
【治療経過】4ポートで腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.気腹圧は8mmHg,手術時間は2時間43分,出血量は48mlであった.経過は良好であったが,術後11日目に腹部膨満感と下痢が出現した.単純CTで腹水貯留と腸管浮腫を,造影CTで上腸間膜静脈の遠位部から門脈の肝門部にかけての血栓形成を認めた.凝固線溶系の亢進(FDPとDダイマーの上昇,ATⅢの低下)と炎症反応の上昇を認めたが腸管壊死の所見はなく,ヘパリン,ATⅢ製剤,抗生剤による保存的治療を開始した.約10日で腹部症状は改善し食事の開始とワーファリンへの切り替えを行った.術後38日目に退院となり,その後も無症状で経過し発症後6カ月の造影CTで血栓は不明瞭化した.発症後8カ月でワーファリン内服を中止し,その後も再燃を認めていない.後日行った血栓性素因の検索では,プロテインC抗原量,プロテインS抗原量,抗カルディオリピン抗体,ループスアンチコアグラントは全て正常範囲内であり,先天的血液凝固線溶異常は認められなかった.
【考察】SMVTは特発性と続発性に分類され,続発性としては,腹部手術(開腹・腹腔鏡下),感染,外傷,血液凝固線溶異常,などが挙げられる.腹腔鏡下手術での発症要因としては,腹腔内圧上昇,腸間膜の血管収縮,体外操作時の腸間膜損傷などが指摘されている.腸管壊死を認めない場合の保存的治療としては,抗凝固療法と血栓溶解療法があり本症例では前者を施行した.血栓消失後のワーファリン内服期間は「深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」を参考にして3カ月程度とする報告が多いが,再発率は10-30%程度と比較的高く慎重な経過観察が重要と言われている.
【結語】腹腔鏡下大腸手術後に上腸間膜静脈血栓症を発症したが保存的治療で軽快した症例を経験した.
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