演題

食道扁平上皮癌におけるホメオボックス遺伝子HOPXの発現は予後不良に関連する

[演者] 山下 智:1
[著者] 山田 和彦:1, 野原 京子:1, 相馬 大介:1, 猪狩 亨:2, 横井 千寿:3, 枝元 良広:1, 矢野 秀朗:1, 土肥 多惠子:4, 河村 由紀:4
1:国立国際医療研究センター病院 外科, 2:国立国際医療研究センター病院 病理, 3:国立国際医療研究センター病院 消化器内科, 4:国立国際医療研究センター病院 研究所・肝炎・免疫研センター・消化器疾患研究部

【背景・目的】癌の発生には遺伝子構造の異常に加え,DNAメチル化に代表されるエピジェネティックな変化も重要な因子である.特にDNAプロモーター領域のCGIのメチル化は遺伝子配列変化を伴わずに遺伝子発現変化を引き起こす機構であり,食道扁平上皮癌のリスクである飲酒や喫煙により修飾を受ける.これまでに我々は,食道扁平上皮癌の切除検体を用いたトランスクリプトーム解析およびメチローム解析を施行し,メチル化変化に伴い発現異常をきたす候補遺伝子の1つとしてHOPXを見出した.HOPXは腸陰窩に存在する幹細胞のマーカー分子として知られている.今回,食道扁平上皮癌におけるHOPX蛋白質の組織発現と臨床因子および予後との関与を検討した.
【方法】2008年から2015年に当施設で食道癌に対して切除術を施行した67症例を対象とし,切除標本から得られた癌部および近傍正常組織におけるHOPX のmRNA発現を定量RT-PCR法により検討した.また,該当症例のパラフィン切片を用いて抗HOPX抗体による免疫組織染色を施行し,HOPX蛋白の発現と臨床病理学的因子との関連を検討した.統計学的検討はχ2乗検定を行い,p<0.05で有意差ありとした.予後に関してはKaplan Meier法を用いてLogrank検定を行った.
【結果】症例は男性/女性56/11例,年齢中央値は69歳,占拠部位別はUt/Mt/LtAe: 16/26/25,深達度pT1/2/3/4:31/8//25/3,リンパ節転移pN0/1/2/3 : 34/17/13/3,遠隔転移pM0/1:62/5.
食道扁平上皮癌組織における HOPX mRNA 発現は,非癌部と比較して有意に低下していた(P<0.05).免疫組織染色の結果,正常扁平上皮ではHOPXは扁平上皮の有棘層の核及び細胞間橋に発現しており,基底層には発現は認めなかった.扁平上皮癌組織におけるHOPX発現は正常と比較して低下していたが,一部にHOPX発現が認められる症例が67例中20例(30%)存在した.発現の有無を臨床病理学的に検討すると深達度別にT1,2 vs T3,4:15%:50%, p<0.05) と有意差を認め,早期癌ではHOPXの発現は低下しているが,進行癌ではむしろ発現が増強していた.またHOPX発現と予後を検討するとHOPXの発現ある症例の予後が有意に不良であった(p<0.05).
【考察】食道扁平上皮癌では,正常粘膜に比較するとHOPX遺伝子の発現が低下していたが,一方で深達度の深い癌ほどHOPX遺伝子発現の頻度が高く,予後にも関連していた.食道扁平上皮癌の進行とHOPX発現の意義については更なる研究が必要である.
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