演題

食道扁平上皮癌における新たな発癌因子APOBEC関連多型の臨床学的意義

[演者] 木戸上 真也:1,2
[著者] 黒田 陽介:1, 吉川 幸宏:1,2, 胡 慶江:1, 南原 翔:1, 林 直樹:1, 伊藤 修平:1, 増田 隆明:1, 江口 英利:1, 三森 功士:1
1:九州大学病院別府病院 外科, 2:大阪大学大学院 消化器外科学Ⅰ

【背景】食道扁平上皮癌は,消化器悪性腫瘍の中でも悪性度が高い癌種であり,リンパ流が豊富で早期からリンパ節転移を起こすため,早期発見につながるバイオマーカーの解明は極めて重要な課題である.SNP:rs1014971は染色体22q13.1の非遺伝子領域にマッピングされ,その下流近傍にはAPOBEC3A,APOBEC3B遺伝子領域が存在する.この領域のSNPは膀胱癌などにおいて癌化のリスク多型として報告されている.しかし,これらとAPOBEC3A/B遺伝子発現やAPOBEC-signature変異パターン(T[C]N >T[G/T]N)との関わりは未だ明らかにはなっておらず,これらが発癌・進展において果たす役割について議論の余地がある.
【目的】食道扁平上皮癌患者における SNP:rs1014971のリスクアレル頻度を調べ,それに基づくgenotypeにおける臨床病理学的因子への影響を明らかにする.exomeシークエンス,遺伝子発現アレイ,メチル化アレイなどのマルチオミクス解析の結果と比較し,APOBEC-signatureやAPOBEC3A/B遺伝子の発現,メチル化などのステータスとの関連を調査する.
【方法】食道扁平上皮癌153症例においてSNPアレイを施行し,B allele frequency(BAF)を用いて,SNP:rs1014971に基づくgenotypeを調査した.また,1000 genome browser(104例)およびHapMap(82例)由来のデータから健常日本人のgenotypeを調査し,比較した.
【結果】当科の食道癌患者153例におけるSNP:rs1014971のリスクアレル頻度は,39.2%(120/306)であり,健常日本人186人のデータと比較して有意な差は認めなかった.(1000 genome browser: 40.4%, HapMap: 39.6%)rs1014971リスクアレルをhomoでもつgenotype(T/T)は,27例(17.6%)と高頻度に見られた.(1000 genome browser: 14.4%, HapMap: 13.4%)このgenotypeの患者群は,他のgenotype(C/T, C/C)と比して,予後に有意差は認めなかった.
【結語】SNP:rs1014971のリスクアレルをhomoで有するgenotypeの日本人は食道扁平上皮癌患者で高頻度に見られ,その発癌,進展に関与することが示唆された.APOBEC-signature変異やAPOBEC3A/B遺伝子の発現,メチル化などのマルチオミクスデータとの統合的解析について現在鋭意進行中である.
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