演題

食道扁平上皮癌におけるバイオマーカーとしてのZNF750発現解析

[演者] 大塚 亮太:1
[著者] 阿久津 泰典:1, 坂田 治人:1, 羽成 直行:1, 村上 健太郎:1, 加野 将之:1, 関野 伸史:1, 横山 将也:1, 松原 久裕:1
1:千葉大学大学院 先端応用外科学

【背景】近年,次世代シークエンサーを用いた食道扁平上皮癌の全ゲノム解析において,ZNF750の遺伝子変異が報告されている.ZNF750は表皮分化を制御している遺伝子である.ZNF750は腫瘍抑制因子として働くことが報告されているが,食道扁平上皮癌におけるZNF750の発現と臨床予後,放射線療法の抵抗性に関する報告はまだない.本研究の目的はZNF750の発現の食道扁平上皮癌における臨床病理学的意義,化学放射線療法の抵抗性との関連性を検討し,バイオマーカーとしての有用性を評価することである.
【方法】1997年から2010年の間に当科で,術前未治療の食道扁平上皮癌に対する手術(内視鏡的粘膜切除術を除く)を施行した73例に対してZNF750で免疫染色を行い,臨床病理学的に検討した.
また,化学放射線療法抵抗性の検討に関しては2010年から2015年の間に当科で生検検体において食道扁平上皮癌と診断され,術前に化学放射線療法を施行された87例を対象とした.生検検体におけるZNF750発現を免疫染色で評価し,手術検体における化学放射線療法の病理組織学的治療効果と比較検討を行った.
【結果】臨床病理学的検討では73例中25例(34.2%)でZNF750の発現を認めた.深達度T2-4の割合はZNF750陽性群で56%,ZNF750陰性群で70.8%であり有意差は認めなかった.リンパ節転移陽性率はZNF750陽性群で44%,ZNF750陰性群で62.5%であり有意差は認めなかった.進行度StageⅡ-Ⅳの割合はZNF750陽性群で72%,ZNF750陰性群で83.3%であり有意差は認めなかった.5年生存率はZNF750陽性群で52%,ZNF750陰性群で36.8%であり,ZNF750陰性群で予後不良であった (p=0.049).
化学放射線療法抵抗性の検討では治療効果を認めた割合(Grade 2, 3)は,ZNF750強発現群で80%,中等度発現群で76%,弱発現群で47%でありZNF750の発現と化学放射線療法に対する反応性には有意差な相関関係を認めた(P = 0.016).単変量解析でもZNF750の中等度以上の発現で化学放射線療法反応性が有意に良好であり(odds ratio, 3.838; 95% confidence interval, 1.522-9.681; P = 0.006),多変量解析においても,ZNF750の中等度以上の発現は独立した予測因子であった(odds ratio, 3.901; 95% confidence interval, 1.531-10.475; P = 0.004).
【結論】食道扁平上皮癌においてZNF750の発現は予後,化学放射線療法抵抗性を予測し,有用なバイオマーカーとなりうると考えられる.
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