演題

p75NTR 発現に基づく食道扁平上皮癌における静止期癌幹細胞の同定

[演者] 小島 博文:1
[著者] 奥村 知之:1, 三輪 武史:1, 長田 拓哉:1
1:富山大学大学院 消化器・腫瘍・総合外科学

静止期癌幹細胞は一般に,その高い抗癌剤抵抗性や腫瘍形成能から悪性度の高い phenotype と考えられている.固形がんにおいて静止期癌幹細胞の分離,同定を行ったとする報告はまだ少なく,とくに食道癌における静止期癌幹細胞の同定に関する既報は無い.p75NTR (CD271) は食道扁平上皮癌における癌幹細胞マーカーのひとつであり,われわれはこれまでヒト食道扁平上皮癌細胞株においてp75NTR 陽性細胞がシスプラチンに対する高い抗癌剤抵抗性と癌幹細胞特性をもつことを示してきた.今回われわれは,フローサイトメトリーによりp75NTR 発現と細胞周期解析試薬である Vybrant Dye Cycle Violet Stain を組み合わせることで食道扁平上皮癌における静止期癌幹細胞の同定を行ったので報告する.ヒト食道扁平上皮癌細胞株 (KYSE-30, KYSE-140)を p75NTR の発現の有無および細胞周期 (G0/1またはS-G2/M) に応じて,1) p75NTR+/G0-1,2) p75NTR+/S-G2-M,3) p75NTR-/G0-1,4) p75NTR-/S-G2-M の4つのグループにソートし,その癌幹細胞特性や薬剤抵抗性,腫瘍形成能について比較実験を行った.RT-PCR による遺伝子解析では,KYSE-30,KYSE-140 ともにp75NTR+/G0-1 のグループで,Nanog,Bmi-1,p63 などの癌幹細胞関連遺伝子が他のグループよりも有意に発現亢進していた.また,MTT assay による抗癌剤抵抗性についての検証では,p75NTR+/G0-1 のグループはシスプラチンに対する抗癌剤抵抗性が他のグループよりも有意に高かった.腫瘍形成能についても,コロニー形成能やヌードマウスにおける腫瘍形成能を各グループ間で比較検証し,やはりp75NTR+/G0-1 のグループが最も高い腫瘍形成能を示した.以上の結果から,今回の手法によって分離したp75NTR+/G0-1 の細胞集団は食道扁平上皮癌における静止期癌幹細胞の特徴をよく反映した細胞集団であると考えられる.
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