演題

新規RNA結合蛋白質MRF1はmicroRNA発現制御を行い食道扁平上皮癌の進展を促進する

[演者] 藤田 悠司:1,2
[著者] 増田 清士:2, 小西 博貴:1, 小松 周平:1, 塩﨑 敦:1, 市川 大輔:1, 藤原 斉:1, 岡本 和真:1, 井本 逸勢:2, 大辻 英吾:1
1:京都府立医科大学医学部 消化器外科学, 2:徳島大学大学院 人類遺伝学分野

【目的】microRNA(miRNA)は遺伝子発現制御機構を広範に制御し,様々な疾患の病態形成で重要な役割を果たすことが明らかとなっている.癌では様々なmiRNAの発現異常が報告され,miRNA生合成機構の不全が示唆されているが,その詳細は不明である.RNA結合蛋白質(RBP)はRNAの転写から翻訳に至るまでの様々な品質管理や発現制御(転写後調節機構)の中心的役割を担っている.近年miRNA生合成機構に様々なRBPが関与していることが明らかとなり,RBPの機能異常と癌でのmiRNA発現変動との関連性が示唆されている.今回我々はDrosha,Dicerと複合体を形成するRBPのmiRNA Regulatory Factor 1 (MRF1:教室名)が食道扁平上皮癌(ESCC)で高発現し,癌関連miRNAの発現変動を誘導することでESCCの進展を促進することを見いだした.
【方法・成績】ESCC手術104症例を対象とした免疫組織染色で,MRF1は正常扁平上皮部に比べESCCで核および細胞質に強い発現を認めた.Kaplan-Meier解析で細胞質のMRF1発現量は予後と負に相関した.Cox比例回帰分析から,細胞質のMRF1発現量は,他の臨床因子とは独立した予後規定因子であった.ESCC細胞株でMRF1をノックダウンすると細胞周期制御因子(p21,p27)の発現が上昇し,増殖能が抑制された.またMRF1ノックダウン細胞でZEB1の発現低下,CDH1の発現上昇を認め,Wound healing assayとBoyden chamber assayで遊走能・浸潤能の抑制が確認された.マイクロアレイを用いた網羅的発現解析から,MRF1ノックダウン細胞で,細胞周期制御因子・細胞接着制御因子を標的とするmiRNAの発現亢進とこれまでに報告されているmiR130bやmiR301aなどの癌促進性miRNAの発現抑制が認められた.以上から,MRF1は癌関連miRNAの発現を特異的に変化させることで,食道癌の進展を促進することが示唆され,詳細な分子機序について検討を行っている.
【結論】MRF1はESCC特異的なmiRNA発現異常を司る重要な因子であることが示唆され,ESCCの新規分子標的となる可能性がある.
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