演題

食道扁平上皮癌浸潤・転移における癌幹細胞マーカーCD44v9発現の意義に関する検討

[演者] 谷口 大介:1
[著者] 佐伯 浩司:1, 中島 雄一郎:1, 中司 悠:1, 田尻 裕匡:1, 中西 良太:1, 杉山 雅彦:1, 藏重 淳二:1, 沖 英次:1, 前原 喜彦:1
1:九州大学大学院 消化器・総合外科学

[背景]CD44v9は頭頸部,胃癌などの癌幹細胞マーカーであり,癌の悪性度や化学療法などに対する治療抵抗性に関与する.EMT(Epithelial Mesenchymal Transition)は上皮系細胞が間葉系細胞に変化し,遊走能を獲得することにより癌の浸潤・転移に関与する.
[目的]食道扁平上皮癌(ESCC)におけるCD44v9発現の意義を明らかにする.
[対象・方法]当科で切除したESCCのうち,術前治療効果がGrade3であった症例を除いた209例を対象とした(術前無治療例143例,術前治療例66例).検討項目①術前無治療症例におけるCD44v9発現:最深部浸潤様式でnon-EMT群105例とEMT群38例に分類した.原発巣を抗CD44v9抗体で免疫組織化学染色(IHC)を行った.腫瘍先進部(Invasive Front;IF)と腫瘍中心部(Center;Cent)において,CD44v9発現細胞割合を比較した.IFにおけるCD44v9発現率75%以上をCD44v9陽性とし,CD44v9発現と臨床病理学的因子・予後を検討した.②術前治療症例におけるCD44v9発現:CD44v9発現と臨床病理学的因子,予後を①と同様に検討した.また,術前治療効果とCD44v9発現を比較した.③リンパ節転移巣・再発切除巣におけるCD44v9発現:原発巣手術時にリンパ節転移を認めた95例,術後再発をきたし再発巣の切除を施行した10例との間でCD44v9発現を比較した.
[結果]①IFはCentより有意にCD44v9発現が高く(平均発現率;IF:47% vs Cent:19%,p<0.0001),IFにおけるCD44v9発現は,EMT群でnon-EMT群より有意に高かった(平均発現率;EMT群:86% vs non-EMT群:30%,p<0.0001).CD44v9発現と臨床病理学的因子に相関は認めなかったが,CD44v9陽性群は全生存率(5年生存率; 64% vs 43%,p=0.01),無再発生存率(5年生存率;53% vs 38%,p=0.046)において有意に予後不良であった.②CD44v9と臨床病理学的因子・予後の間に有意な相関は認めなかった.術前治療効果がGrade2症例19例のうちCD44v9陽性例は9例(47%),Grade0,1症例47例のうちCD44v9陽性例は7例(15%)であり,Grade2症例でCD44v9の発現率が高かった(p=0.0070).③リンパ節転移巣は原発巣に比べ有意にCD44v9発現が高かった(平均発現率;53% vs 33%,p<0.001).再発巣は原発巣よりCD44v9発現が高い傾向であった(平均発現率;69% vs 39%,p=0.079).
【結語】ESCCにおいて,CD44v9はEMT型の癌浸潤や転移に関係しており,予後不良因子であった.また,術前治療効果の高い症例での生残癌細胞にCD44v9が高発現しており,CD44v9発現が治療抵抗性に関与することが示唆された.
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