演題

食道癌術前治療症例における脈管侵襲の予後因子としての意義

[演者] 伊富貴 雄太:1
[著者] 浜井 洋一:1, 恵美 学:1, 古川 高意:1, 岡田 守人:1
1:広島大学原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科研究分野

背景:食道表在癌において脈管侵襲(Vascular invasion: VI)はリンパ節転移のリスク評価に有用であり,重要な病理学的因子である.一方,進行食道癌には術前治療後の外科切除が標準治療であり,脈管侵襲とリンパ節転移及び予後との関連性は一定の見解が得られていない.
対象と方法:2003年4月~2015年3月に組織学的に扁平上皮癌と診断され,術前治療を行った後に完全切除を施行し得た163例中(術前化学放射線療法128例,術前化学療法35例),原発巣が病理学的に完全奏功(Grade 3)となった48例を除外した115例を対象とした.脈管侵襲の有無及び他の病理学的因子と無病再発期間(DFS)の関連性を評価した.
結果:VI陽性は60例に認めた(52.2%).内訳はリンパ管侵襲50例,静脈侵襲31例であった.VI陽性例は陰性例に比べ有意に予後不良であった(5年DFS率, VI(+)群 23.1% vs VI(-)群 58.3%: p < 0.001).脈管侵襲の有無において,原発巣の組織学的効果判定Grade 1(n = 47; 5年DFS率29.9% vs 58.8%: p = 0.034),Grade 2 (n = 57; 5年DFS率23.5% vs 56.1% : p = 0.028)症例でも有意差を認め,予後の層別化に有用であった.VIにpT因子,pN因子,原発巣の組織学的効果判定を加えてDFSに対する多変量解析を行ったところ,VI(HR = 1.72: p = 0.076)は予後不良となる傾向はあるが有意差には至らなかった.pT因子(HR = 1.54: p = 0.005),pN因子(HR = 3.557: p < 0.001)は独立した予後因子であった.リンパ節転移陽性例(n = 66; 5年DFS率15.6% vs 31.7% :p = 0.137)ではVIの有無で予後に差はなかったが,リンパ節転移陰性例(n = 49; 5年DFS率42.9% vs 77.5% :p = 0.042)では有意差を認めた.
結語:原発巣が完全奏功を得られなかった場合,リンパ節転移の有無が最も強い予後因子であるが,特にリンパ節転移陰性症例において脈管侵襲の有無は予後と相関していた.術前治療を施行した食道扁平上皮癌においてVIの有無は予後因子となり得る.
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