演題

筋肉量,栄養指標の推移からみた胸腔鏡下食道切除術の有用性の検討

[演者] 室谷 隆裕:1
[著者] 和嶋 直紀:1, 小笠原 紘志:1, 谷地 孝文:1, 佐藤 健太郎:1, 袴田 健一:1
1:弘前大学大学院 消化器外科学

【背景】胸腔鏡下食道切除術は開胸手術と比較して胸壁破壊が少なく,また拡大視効果から出血量の減少や術後合併症の減少が期待され,当科では2014年より導入した.今回筋肉量,栄養指標の視点から胸腔鏡下食道亜全摘術の有用性を検討することを目的とした.
【対象と方法】2014年1月から2016年6月までに食道癌に対して食道亜全摘術を施行した53例(開胸群41例,胸腔鏡群12例)を対象とした.胸腔鏡手術は左側臥位,気胸下に施行し,両群ともに開腹下に胃管を作成し,胸骨後経路にて頚部で食道胃管吻合を施行した.
筋肉量は術前,術後3ケ月時のCT画像を用いて,第3腰椎レベルの腸腰筋面積を測定し,身長で補正したPsoas muscle mass index(PMI)を算出した.栄養指標にはControlling nutritional status score(CONUT score)を用い,術前,術後7病日,30病日,90病日で測定した.開胸群,胸腔鏡群の2群間での患者背景,手術短期成績とともに,PMI,CONUT scoreの推移を比較した.
【結果】対象症例の平均年齢は63.5歳,男女比48:5であり,腫瘍の局在はUt/Mt/Lt/Ae=3/26/21/3,cStage0/I/II/III=2/13/18/20であった.2群間の比較では平均手術時間は451分vs450分(p=0.379)と差は認めず,出血量は325mlvs685ml(p=0.031)と胸腔鏡群が有意に少なかった.Clavien-Dindo分類Grade 2以上の術後合併症は胸腔鏡群で呼吸器合併症が1例(8.3%),反回神経麻痺3例(25%),開胸群では呼吸器合併症が12例(29.3%),反回神経麻痺5例(12.2%)であり,胸腔鏡群で呼吸器合併症が有意に少なく(p=0.020),反回神経麻痺(p=0.068)は有意差は認めないが多い傾向がみられた.術後在院日数は21.2日vs 29.4日と胸腔鏡群で短く(p=0.039),術後3ケ月時のPMI減少率は2.7% vs 9.5%(p=0.032),CONUTscoreは術後30病日 1.71 vs 2.35(p=0.049),90病日 0.20 vs 1.45(p=0.022)であり,胸腔鏡群で筋肉量の減少および栄養状態の低下が抑制されていた.また,術後PMI減少に関わる因子解析では術後合併症が危険因子とされ(HR:3.271,p=0.025),胸腔鏡手術は予防因子とされた(HR:0.129,p=0.018).
【まとめ】侵襲時には侵襲の大きさに比例して異化が亢進し,栄養状態の悪化及び筋肉量の低下が引き起こされる.本検討において胸腔鏡群では術後早期の筋肉量の低下および栄養状態の悪化が抑制されていることが示され,栄養指標,体組成の観点からも胸腔鏡下食道切除術の低侵襲性,有用性が示唆された.
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