演題

呼吸機能障害を伴う食道がんに対する腹臥位胸腔鏡下食道切除術の検討

[演者] 道浦 拓:1
[著者] 井上 健太郎:1, 稲田 涼:1, 三木 博和:1, 尾崎 岳:1, 向出 裕美:1, 繁光 薫:1, 里井 壮平:1, 濱田 円:2, 權 雅憲:1
1:関西医科大学医学部 外科学, 2:関西医科大学附属病院 消化管外科

(はじめに)鏡視下食道切除は,その低侵襲性や拡大視効果による精緻な手術が可能な事が報告され,多くの施設で導入され症例数も増加傾向である.特に呼吸器合併症を減少させるとの報告(Surya et al. ;Lancet:2012など)があるが,NCDのデータ解析では胸腔鏡下食道切除術と従来の開胸手術で肺炎の発症頻度の差はなかった.
当科では2009年より両側肺換気による腹臥位胸腔鏡下食道切除術(MIE)を導入しているので,より肺合併症の頻度が高まると推測される呼吸機能障害を伴う症例において,腹臥位胸腔鏡下食道切除術(MIE)が開胸手術(OE)に対し有意に肺合併症を減少させるかを検討する.
(方法と対象)2006年1月から16年8月までに,当科で胸部食道がんに対する食道亜全摘術を施行した348例中,呼吸機能障害を伴った67例を対象とした.開胸群(OE)43例と腹臥位胸腔鏡下食道切除術(MIE)39例での肺合併症の発生頻度を後方視的に検討した.
(結果)対症とした症例OE 群とMIE群の2群間に年齢,性,ASA,主占拠部位,組織型,cStage,術前化学療法の有無,リンパ節郭清領域,再建経路などで有意な差はなかった.手術関連因子では,手術時間がMIE群496分,OE群448分,出血量はMIE群377mlとOE群710mlで,MIE群で有意に手術時間が長かったが(p=0.007),出血量は少なかった(p=0.002).肺合併症はMIE例(肺炎5例:12.8%),OE群17例(肺炎16例,ARDS1例:39.5%)とMIE群で有意に少なかった(p=0.01).その他の縫合不全(MIE:12.8%, OE:16.6%),反回神経麻痺(MIE33.3%, OE29.1%)などの合併症には両群間に有意な差はなかった.また,Clavien-Dindo分類(3以上)の発生頻度各々MIE:20.6%, OE:12.8%で有意な差はなかった.在院日数の平均値はMIE群22日(11-65),OE群32日(11-127)でMIE群が有意に短かった(p=0.006).OE群にのみ1例在院死亡を認めた.
(まとめ)MIEは術後の肺合併症を有意に減少させ,呼吸機能障害を伴う胸部食道がん患者に対する治療として有用であると思われた.
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