演題

表在性食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術の功罪

[演者] 細田 桂:1
[著者] 山下 継史:1, 森谷 宏光:1, 三重野 浩朗:1, 江間 玲:1, 鷲尾 真理愛:1, 片田 夏也:2, 渡邊 昌彦:1
1:北里大学医学部 外科, 2:東邦大学医療センター大橋病院 外科

【目的】cT1N0食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術の安全性有効性を明らかにすること.
【方法】2001年~2015年に当施設で食道切除術を受けたcT1N0食道癌105例(開胸群:胸腔鏡群=35:70)を対象とし,患者背景,手術因子, 術後短期長期成績を後ろ向きに比較検討した.当施設では2006年7月に左側臥位胸腔鏡下食道切除術を導入しており,2001年から2006年6月までの症例は開胸手術,2006年7月以降は左側臥位胸腔鏡手術が行われた.また2013年1月から気胸併用の胸腔鏡手術を施行した(気胸群:非気胸群=32:38).観察期間中央値は開胸群が105か月で胸腔鏡群が26か月であった.
【成績】患者背景は開胸群 vs 胸腔鏡群で,男性/女性 25/10 vs 63/7 (p=0.018),年齢 65 (49-75) vs 67 (54-82) (p=0.008),BMI 21.6kg/m2 vs 22.4kg/m2 (p=0.16)であった.胸腔鏡群のうち開胸移行は3例(4.3%)であった.胸部操作時間は184分 vs 313分 (p<0.001)であり胸腔鏡施行例で有意に長く,出血量は604ml vs 652ml (p=0.74) と同等であった.出血量は気胸併用例で気胸非併用例と比較し少ない傾向があった(491ml vs 685ml, p=0.16).術後短期成績については開胸施行例 vs 胸腔鏡施行で,術後在院日数,術後2日目,5日目CRPに有意差を認めなかった(36.5日 vs 35日, p=0.57;14.6mg/dl vs 14.7mg/dl, p=0.88; 10.3mg/dl vs 7.3mg/dl, p=0.27).術後合併症については開胸施行例 vs 胸腔鏡施行で,縫合不全 9例(24%) vs 25例(37%) (p=0.15),吻合部狭窄 8例(23%) vs 25例(37%) (p=0.14),反回神経麻痺 13例(34%) vs 35例(53%) (p=0.064)と両群間で有意差は認めなかったが,胸腔鏡施行例で悪い傾向があった.胸部リンパ節郭清個数は29個 vs 18個 (p<0.001)と胸腔鏡施行例で有意に少なかった.5年全生存割合は92% vs 86% (p=0.18),5年無再発生存割合は86% vs 83% (p=0.15)で両者ともほぼ同等であった.
【結論】2006年以降は食道癌の手術を受ける患者は男性が多くなり,高齢化し,BMIが高い傾向があった.胸腔鏡下食道切除術は開胸手術と比較して,手術時間は長く郭清リンパ節個数は少なく,反回神経麻痺,縫合不全は多い傾向があった.一方で,術後5日目のCRPは低い傾向があり低侵襲性が示唆され,気胸を併用することで出血量を軽減できる可能性が示唆された.また長期成績は開胸手術と同等であった.胸腔鏡下食道切除術は高難度手術であり,慎重に適応するべき手術である.
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