演題

当科における腹臥位食道切除術の導入のその短期成績

[演者] 羽場 祐介:1
[著者] 柄田 智也:1, 郡司掛 勝也:1, 山崎 祐樹:1, 竹下 雅樹:1, 松井 恒志:1, 天谷 公司:1, 加治 正英:1, 前田 基一:1, 清水 康一:1
1:富山県立中央病院 外科

【背景】本邦における食道切除術は, 体腔鏡を用いた手術が急速に普及し, 現在では約半数近くを占めると推測される. 当科でも2016年1月より腹臥位胸腔鏡下食道切除術を導入した. 従来の開胸開腹手術と比較検討し, その短期成績を報告する.
【対象】2015年1月から2016年11月までの食道癌手術症例, 開胸手術群(open surgery; OS)29例, 胸腔鏡下食道切除群(thoracoscopic esophagectomy; TE)16例を比較検討した.
【方法】当科での食道癌手術は2領域(胸腹部)郭清を標準としており, 頸部リンパ節転移陽性症例以外は頸部郭清を行わない. OS群は左側臥位, double lumen tubeによる分離肺換気, 仰臥位による開腹手術である. TE群は左半側臥位からのベッドローテーションにより腹臥位として胸腔内操作を行い, 次いで開脚位による腹腔鏡補助下または開腹による胃管作成, 引き続く頚部での食道胃管吻合をもって一連の手術操作とする. 麻酔管理はsingle lumen tubeに気管支ブロッカーを併用した分離肺換気で行い, 状況に応じて両肺換気に切り替えている. 術中は制限輸液管理を基本として, 麻酔科医の判断で輸液, 輸血製剤などが選択される.
【結果】両群間で年齢, 原発部位, 腫瘍径, 進行度, 再建経路に有意差はなかった. OS群では吻合は全例circular stapler(CS)で行なっており, TE群ではCS7例, 三角吻合9例であった. 手術時間はOS群330分(275-450), TE群438分(355-540)とTE群で有意に長かった(p<0.01)が, 出血量はOS群330ml(275-450), TE群100ml(20-760)と有意に少なかった(p<0.01). 術中総輸液量はOS群3050ml(1400-5500), TE群2575ml(1600-4300)と有意差は認めなかったが, 単位時間当たりの輸液量はTE群で少なかった. 開胸移行症例は1例, 高度な肺癒着症例であった. リンパ節郭清個数はOS群で33個, TE群で32個と同等であった. 術後合併症に関してOS群で14例(48%), TE群で6例(38%)であり, その内訳では術後肺炎がそれぞれ5例(17%), 3例(19%), 反回神経麻痺は3例(10%), 1例(5%)であった. Clavian-Dindo分類のGrade3以上はOS群で3例(縫合不全2例, 乳び胸1例), TE群では認めなかった. 術後在院日数中央値はOS群18日, TE群18日と比較的良好な成績であった.
【まとめ】今回の検討では, 比較的安全に腹臥位胸腔鏡下食道切除術を導入できていると考えられた. 今後は郭清度の拡大などの治療成績向上に向けた手術手技の再考を要すると考えている.
詳細検索