演題

高齢・胃切後胸部食道癌に対する嚥下機能温存と血行付加を考慮した新規縦隔横断胸骨後経路高位胸腔内吻合

[演者] 平木 洋子:1
[著者] 白石 治:1, 岩間 密:1, 加藤 寛章:1, 安田 篤:1, 新海 政幸:1, 今野 元博:1, 木村 豊:1, 今本 治彦:1, 安田 卓司:1
1:近畿大学附属病院 外科(上部消化管外科)

【はじめに】人口の高齢化に伴い高齢食道癌患者でも積極的治療を望む患者が増えている.しかし予備力は低下しており,高齢者に対する手術適応や臓器機能に応じた術式の検討が必要である.今回我々は超高齢者に対して手術侵襲の軽減,安全性の確保と機能温存の全てを両立する全く新しい術式を考案し,良好に経過した症例を経験したので報告する.
【高齢者食道癌手術の問題点】75歳以上では在院死亡率,術後肺合併症率が有意に高い(Law S. Ann Surg 2004).原因は手術の過大侵襲や加齢・長期の喫煙歴による呼吸機能の低下に加え,嚥下機能(嚥下反射と喉頭挙上運動)の低下の関与が考えられる.高齢者では嚥下反射の低下を運動機能で補完しており(Malandraki GA, Human Brain Mapping 2011),頸部操作の回避が重要である.
【症例】83歳の男性.主訴は嚥下困難.上部内視鏡検査にて門歯35㎝右壁に半周性の3型腫瘍(生検:SCC)を認めた.CTではLtに壁肥厚を認めたが,有意なLN腫大や臓器転移はなく,LtのSCC,cT2N0M0 StageⅡAと診断した.患者は強く手術治療を希望したが,8年前に早期胃癌で幽門側胃切除+B-I術の既往があり,内服治療中の糖尿病(HbA1c 6.5)から軽度の腎障害(Cre1.22,eGFR44)を呈していた.我々の第一選択通常は皮下経路有茎空腸再建(頸部吻合)+血行再建であるが,術後の誤嚥のリスクから頸部吻合を回避した胸腔内吻合が望まれる.腫瘍はLtでLN転移も否定的なので適応可能だが,胸腔内吻合では血管吻合の付加が困難で縫合不全やグラフト壊死のリスクが高くなる.そこで,空腸を胸骨後に挙上後,上前縦隔から後縦隔へ落とし込んで高位胸腔内吻合を行ない,血管吻合は胸骨後で内胸動静脈と行なう全く新しい術式を考案した.手術は左側臥位右開胸下にまず胸部操作を行い,腹部操作の際に左半側臥位として残胃全摘後にJ3を血管丙として空腸を挙上し,再開胸後に前縦隔から後縦隔へ誘導して胸腔内器械吻合をした.その後右第3肋軟骨を切除してJ2と右内胸動静脈を吻合した.手術時間は14時間11分,出血量792ml.術後経過は良好で,縫合不全や誤嚥もなく,POD10より経口摂取を開始し,POD25に退院となった.現在術後4か月経過しているが,経口摂取も良好で,再発もなく経過している.
【結語】我々が考案した縦隔横断経路再建術は,機能温存と安全性を確保しうる新しい術式として同様の症例では考慮すべき有用な術式と考える.
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