演題

血管吻合を付加した胃管作成不能例に対する有茎空腸再建術の有用性

[演者] 金高 賢悟:1
[著者] 小林 慎一朗:1, 井上 悠介:1, 大野 慎一郎:1, 曽山 明彦:1, 足立 智彦:1, 日高 匡章:1, 藤田 文彦:1, 高槻 光寿:1, 江口 晋:1
1:長崎大学大学院 移植・消化器外科学

【目的】胃が再建臓器として使用出来ない食道癌症例において,当科においては胸壁前経路での有茎空腸の挙上と,形成外科医の協力による顕微鏡下血管吻合付加を標準術式としている.当科にて施行している食道再建の術式と胃管再建と比較した成績について報告する.【方法】2006年12月から2016年11月までに胸部食道切除を行った135例のうち,胃管作成が不能で挙上空腸,頸部吻合による食道再建を行った10症例を対象とした.同時期に胃管再建,頸部吻合を施行した87例とを手術因子,合併症など比較検討した.また画像解析ソフトSynapseVincentによる解析が可能であった5例と胃管再建32例にて術後1年での内臓脂肪および皮下脂肪変化率を検討した.基本術式としては,第2もしくは第3空腸動静脈を処理,腸管を胸壁前ルートにて挙上した.全例において,第2空腸動静脈と右内胸動静脈の吻合を形成外科医によって顕微鏡下血管吻合を施行した後,頸部食道と挙上空腸にて端側吻合を行った.【結果】症例は全例男性で,年齢は中央値62.5歳(56-73 歳)であった.胃管作成不能の理由は,胃切除術後5例,同時性胃癌の合併3例,食道胃接合部癌1例,食道癌術後胃管癌1例であった.手術時間は平均887.7分で,胃管再建例の604.6分に比較し有意に延長していた(p<0.001)が,出血量は691.1gと636.6gにて差を認めなかった(p=0.82).術後在院日数は胃管再建群平均32.3日に比較して有茎空腸群43.8日と,長い傾向であったが有意差はなし(p=0.10).再建に伴う合併症としては,挙上空腸の壊死,縫合不全は認めなかった.Clavien-Dindo分類IIIa以上の合併症の発生は,有茎空腸群3/10症例(30%),胃管再建群27/87症例(31%)と差を認めなかった(p=0.77)が,有茎空腸群に腹壁貫通部でのヘルニアによる再手術2例を認めた.術後1年目での内臓脂肪変化率(42.6% vs.57.2%, p=0.68)および皮下脂肪変化率(65.0% vs. 62.8%, p=0.94)に差を認めなかった.
【結論】
有茎空腸による食道再建において形成外科医による顕微鏡下血管吻合を行うことで挙上空腸壊死などの致死的な合併症を認めなかったが,腹壁貫通部のヘルニアの予防に留意すべきであった.血管吻合付加のため手術時間は延長するものの,胃管再建に比較して,術後合併症の発生や術後在院期間に有意差はなく,術後1年の内臓脂肪,皮下脂肪率でも遜色を認めず,胃管作成不能時の食道再建の第一選択となりうると考えられた.
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