演題

腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術(Lap-PD)を施行する上で学ぶべきこと

[演者] 中村 慶春:1
[著者] 松下 晃:1, 神田 知洋:1, 古木 裕康:1, 谷合 信彦:1, 吉岡 正人:1, 清水 哲也:1, 山初 和也:1, 住吉 宏樹:1, 内田 英二:1
1:日本医科大学医学部 消化器外科・乳腺外科

腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術(Lap-PD)は,平成28年度の保険改定で新規に保険収載された.邦外文献では出血量軽減と在院日数の短縮,さらには悪性腫瘍の長期予後における一部優越性を含む全生存期間の非劣性が開腹術との比較試験で示され,これから多くの施設で導入されていく事が予想される.鏡視下手術の視覚増幅効果は,後腹膜臓器の切除操作を繊細に行う事を可能とする.さらに手術チーム全員が同一の視野を得られるため,術者の手術操作に対してタイムリーにフィードバッグを与える事ができる.その為より安全な手術をLap-PDに代表される高難度腹腔鏡下手術においても患者に提供する事が可能となる.ただしその施行においてはデメリット(2次元,鉗子の可動制限,触覚の鈍麻)を常に念頭に掲げておく必要がある.2次元空間では奥行きの把握が難しくなるため,切除操作では解剖誤認を防ぎ得る広い術野を創造し手技を進めていく事が重要である.さらに膵臓は後方に固定されている臓器のため,その鏡視下の吻合においてmove the ground techniqueは使用できない.膵消化管吻合は術後の膵液瘻の発生に直結する縫合手技であり,少なくとも本術式の導入時期においては,膵切離断端の直上に患者の体型に合わせた小さな切開創を置いて直視下に縫合すべきであると思われる.ただし膵頸部は脊椎を騎乗するため後腹膜臓器でありながらも比較的腹壁の近傍に位置するが,胆管(肝管)は膵頸部とは異なり体躯の後方に存在するため小さな正中切開創からの運針操作は難しい.よって鏡視下での胆管空腸吻合法をマスターしておく事は,Lap-PDを施設内に導入するにあたり大変重要な鍵のひとつとなる.
U.S.のNational Cancer DatabaseにおいてLap-PDの術後30日死亡率が開腹術と比較し有意に高かった事が2015年に報告された(5.1% vs 3.1%).ただしそのデータ登録施設の92%は2年間で10例以下,さらに50%が1例のみの施行であり,日本と同様にU.S.においても本術式は大多数の施設において未だ導入時期である事が判明した.
今回,本術式を安全に導入する事を目的として,文献のreviewおよび実際の手術手技のコツ,注意点などについて解説する.
詳細検索