演題

肥満2型糖尿病に対する腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の成績と腸内細菌叢の変化

[演者] 馬場 誠朗:1
[著者] 佐々木 章:1, 大塚 幸喜:1, 新田 浩幸:1, 高原 武志:1, 秋山 有史:1, 岩谷 岳:1, 梅邑 晃:1, 肥田 圭介:1, 水野 大:1
1:岩手医科大学医学部 外科学

【目的】腸内細菌叢は糖尿病,動脈硬化などのさまざまな病態への関与が示唆されており,肥満者においては腸内細菌叢の比率がFirmicutes門で上昇し,Bacteroidetes門では低下すると報告されている.BMIが低値で発症する日本人の2型糖尿病(T2DM)に対して,第2回糖尿病手術サミットで推奨されたmetabolic surgeryの効果が期待される.今回,腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(LSG)を施行した肥満T2DM患者の臨床成績と腸内細菌叢の変化について報告する.
【方法】2008年6月より2016年11月までの間にLSGを施行した高度肥満症67例中,術後1年を経過したT2DM 37例を対象とした.初診時の患者背景(平均値)は,年齢47.6歳,BMI 42.2 kg/m2,Cペプチド値3.1ng/ml,糖尿病治療期間72.4か月であった.術後1年のT2DM完全寛解+部分寛解(HbA1c 6.5%未満かつ糖尿病治療薬中止:A群)27例と非寛解(B群)10例を比較検討した.また,健常人ボランティア5名(BMI 23.5 kg/m2)および,肥満T2DM患者7例のLSG前/術後1か月(BMI 44.9/37.0 kg/m2,p=0.035)を対象として,便検体から次世代シーケンサーを用いて腸内細菌叢の組成を比較検討した.
【成績】患者背景(A群/B群)では,初診時の年齢(44.6/55.9歳),BMI(42.2/42.0 kg/m2),HbA1c(8.2/8.2 %),インスリン使用率(37/60%),インスリン使用量(10.7/24.1単位),内臓脂肪量(287.4/287.6 cm2)で差を認めず,T2DM治療期間(55/120か月, p=0.008)はB群が長期であった.術後1年ではBMI,肝容積,Cペプチドでは差を認めず,過剰体重減少率(54.2/40.7 %,p=0.046)と内臓脂肪量(136.9/182.8 cm2, p=0.046)で有意差を認めた.また,37例中インスリン未使用(21例)の寛解例(17例)と非寛解例(4例)のHOMA-IR(術前/術後1年)では,非寛解例2.2/2.0(0.866)に比較して,寛解例で9.8/2.5(p=0.043)と術後有意に低下した.腸内細菌叢の割合は,LSG術前/ボランティアではFirmicutes 71/38 %(p=0.018),Bacteroidetesは24/59 %(p=0.062),LSG前/術後1か月では,Firmicutes 71/57 %(p=0.179),Bacteroidetesは24/34 %(p=0.309)でった.LSG後にはBacteroidesの上昇と,Firmicutesの減少傾向が認められた.
【結語】肥満T2DMの寛解には,LSGによる内臓脂肪の減少とインスリン抵抗性の改善が関与していることが示唆された.また,LSGの代謝改善効果と腸内細菌叢の関連性について術後長期の検討が必要であると考えられる.
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