演題

直腸脱の外科治療戦略ー当院の経験より

[演者] 高橋 賢一:1
[著者] 羽根田 祥:1, 徳村 弘実:2, 片寄 友:2, 西條 文人:2, 松村 直樹:2, 野村 良平:2, 武藤 満完:2, 安本 明浩:2
1:東北労災病院 大腸肛門病センター, 2:東北労災病院 外科

【目的】直腸脱に対する手術術式はこれまで数多く報告されており,大別すると経腹的直腸固定術と経肛門手術がある.経腹的直腸固定術は手術侵襲が大きいこと,経肛門手術は再発率が高いことが問題と考えられているが,その術式選択についてはいまだ一定の見解が得られているわけではない.当院では低侵襲性と低再発率の両立を目指してメッシュを用いたWells変法による腹腔鏡下直腸固定術を基本術式として大部分の症例に行っているが,本術式を含めた直腸脱手術の外科治療戦略と意義を明らかとすることが本研究の目的である.【方法】2005年から2015年までに当院で手術を行った直腸脱症例143例を対象として,術式選択と手術成績について検討を行った.【成績】118例において経腹的直腸固定術が選択され,25例において経肛門手術が選択された.経腹的直腸固定術のうち109例がWells変法による腹腔鏡下直腸固定術であり,開腹移行率は4.6%であった.経肛門手術の内訳は,Delorme手術が16例,Thiersh手術が4例,ALTA多点法+Thiersh手術が4例,Gant-三輪-Thiersch手術が1例であった.これら肛門手術は脱出の程度の小さな症例および心肺機能や全身状態から全身麻酔困難と判断された症例で選択された.手術時平均年齢は,経腹的直腸固定術の73歳に対し経肛門手術が80歳と有意に高かった(p<0.05).ただし腹腔鏡下直腸固定術群でも7例が90歳以上であり,最高齢は101歳であった.再発率は経肛門手術で24%,経腹的直腸固定術で7%であり,経肛門手術で高かった(p<0.01).術後合併症は経肛門手術ではみられず,腹腔鏡下直腸固定術で5.9%,開腹直腸固定術で12.5%であった.いずれも死亡例はみられなかった.術後在院期間(中央値)は,経肛門手術で8.5日,腹腔鏡下直腸固定術で9日,開腹直腸固定術で16日であり,経肛門手術と腹腔鏡手術で同等であった.【結論】経腹的直腸固定術は経肛門手術と比べ,根治性の面でより優れると考えられた.なかでも腹腔鏡下直腸固定術は開腹手術と比較し早期回復を期待でき,全身麻酔管理であれば高齢者においても耐術可能であり,有用な術式と考えられた.一方,経肛門手術は再発率がやや高いが,全身麻酔困難な状態不良例においても術後の大きな問題なく施行できるなど,重要な治療選択肢のひとつとなり得ると考えられた.
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