演題

他臓器浸潤を伴った直腸癌の治療成績と予後因子

[演者] 稲垣 大輔:1
[著者] 塩澤 学:1, 里吉 哲太:1, 渥美 陽介:1, 風間 慶祐:1, 樋口 晃夫:1, 利野 靖:2, 益田 宗孝:2
1:神奈川県立がんセンター 消化器外科, 2:横浜市立大学附属病院 一般外科

【はじめに】他臓器浸潤を伴った直腸癌(T4b)は非浸潤癌と比較して予後不良であると報告されている.pT4b直腸癌の治療成績の特徴と予後因子を明らかにするために,われわれが治療を行った症例の検討を行った.【対象と方法】2000年から2011年までに当科で手術を施行した直腸癌(直腸RS癌は除く).術中診断でsT4bは69例,他臓器浸潤のため非切除であった症例が5例,原発巣切除し組織学的にpT4bであった症例は44例.本検討の対象に術前化学療法や化学放射線療法は行われていなかった.観察期間の中央値日984.診療録などから後方視的検討を行った.統計学的手法として,因子間の解析にはカイ二乗検定を行った.生存分析にはKaplan-Meier法を用いてLog-rank検定を行った.P値 0.05未満で有意差ありとした.大腸癌取扱い規約第8版を用いた.【結果】pT4b 44例の臨床病理学的因子について,平均年齢62.8歳,男性/女性 20/24例,腫瘍の主座はRa/Rb 22/24例,術式は他臓器合併切除を伴うLAR/Hartmann/APR/TPE 16/4/18/6例,進行度はStage II/III/IV 8/23/13例,剥離面の癌浸潤陽性10例で,腫瘍の遺残R0/R1/R2 25/7/12例であった.腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側の28例中21例(75.0%)に側方郭清を行った.Stage IIとIIIの31例のうち26例(83.9%)に術後補助化学療法を行った.腫瘍浸潤部位に関して,膀胱/尿管/前立腺/精嚢/子宮/膣/卵巣/腸管/骨盤壁 7/1/5/3/12/10/5/5/9例(重複あり)と,子宮・膣への浸潤を高率に認めた(女性症例においてそれぞれ50.0%, 41.7%).R0とR1を比較すると,局所再発はR0/R1で3/5例でありR1に有意に高率に認め(P<0.001),またR1は有意に予後不良であった(P=0.036).次にR0症例の25例における予後因子を検討した.単変量解析では低分化腺癌・粘液癌,リンパ管侵襲ありの症例で有意に予後不良であった.これらの項目を投入し多変量解析を行ったところ,低分化腺癌・粘液癌とリンパ管侵襲ありはいずれも独立した予後不良因子であった(P=0.035, 0.019).【結語】pT4b症例ではR0とR1で予後に有意差を認め,他臓器合併切除によるR0切除が重要であった.R0症例では低分化腺癌・粘液癌とリンパ管侵襲ありは予後不良因子であり,Stage IIでもこれらの因子を伴う症例には術後補助化学療法を積極的に検討する必要があると考えられた.今後,pT4b直腸癌の治療成績の向上のために術前治療を含めた治療戦略を検討していきたい.
詳細検索