演題

下部直腸癌T4b症例に対する腹腔鏡下またはTaTMEによる系統的臓器合併切除の安全性と妥当性の検討

[演者] 高橋 亮:1
[著者] 山田 晴美:1, 橋本 恭一:1, 吉冨 摩美:1, 久森 重夫:1, 角田 茂:1, 肥田 侯矢:1, 河田 健二:1, 小濱 和貴:1, 坂井 義治:1
1:京都大学大学院 消化管外科学

[背景]
隣接臓器浸潤を伴う局所進行直腸癌T4b症例に対する根治手術は,狭く深い骨盤内での操作が要求され,肥満症例や腫瘍径が大きい場合など視野確保が困難となることもある.一方,腹腔鏡下手術(Lap)は拡大視効果によって精緻な剥離・切離操作を可能にするが,直腸癌における安全性と妥当性は十分に確立されておらず,骨盤底での鉗子操作の難しさ,浸潤境界を同定する触覚の鈍さなどのデメリットもある.以前当科で行ったT4b直腸癌27例の後ろ向き検討では,骨盤内臓全摘術はすべて開腹アプローチが選択されていた.またLapの直腸切断術でも前立腺など骨盤最深部臓器浸潤の部分切除は会陰側より直視下に行われており,この操作による剥離断端が陽性(R1)となった症例があった.
[目的・方法]
近年当科では,特に前方臓器浸潤のあるT4b直腸癌に対する後方内臓全摘や骨盤内臓全摘などの系統的合併切除を,Lapおよび鏡視下trans-perineal total mesenteric excision (TpTME)の手法を組み合わせて行い,鏡視下手術のメリットを最大限に享受しつつR0手術を安全に施行することを目指している.当科でLapあるいは鏡視下TpTMEにより浸潤部を含めた系統的切除を行った症例の手術ビデオを供覧し,その安全性と妥当性を検討する.
[結果]
<症例1>80歳台女性,Rb直腸癌膣浸潤に対してLap後方内臓全摘術施行.女性骨盤にはTpTMEを適応せず,腹腔操作で子宮前面に入り,膣後壁を部分切離した.pT4bN0M0,剥離断端陰性であった.膣断端離開に対して再縫合を行った他は術後経過良好であった.<症例2>30歳台男性,RbP直腸癌前立腺浸潤・穿通,膀胱側腔リンパ節腫大に対して術前化学放射線治療のうえLap+TpTME骨盤内臓全摘術施行.腹腔側,会陰側双方より観察しながら切離を行った.ypT2N0M0,剥離断端陰性.特記すべき術後合併症なく経過した.
[考察]
Lapによる系統的合併切除は,技術的難易度は高いものの骨盤深部でも生理学的剥離層を保って切離を進める際にメリットが生かせる場合がある.従来は視野や操作が制限されやすい骨盤底臓器への浸潤部近傍では,TpTMEの手法も組み合わせることでより精緻な切離ライン決定が可能となり得る.隣接臓器の系統的合併切除は術後QOLに大きな影響を与えるため,根治性とのバランスを慎重に考慮する必要があるが,高度進行直腸癌に対して狭い骨盤内でR1となるリスクを減らすために,術前治療に加えてLap, TpTMEを適用した浸潤部合併切除は有用なオプションとなり得ると考えらえた.
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