演題

EBV-positive lymphoproliferative disorderによるS状結腸mucocutaneous ulcerの切除例

[演者] 古賀 修平:1
[著者] 花岡 裕:1, 的場 周一郎:1, 黒柳 洋弥:1
1:虎の門病院 消化器外科

EBV-positive lymphoproliferative disorder(EBV-LPD)は,EBV陽性のBリンパ球が宿主の免疫能低下で増殖し,リンパ腫様の病態をきたす疾患である.特に皮膚や粘膜に局在し,潰瘍性病変を呈するものはEBV-positive mucocutaneous ulcer(EBVMCU)と称される.皮膚と口腔内が好発部位とされ,大腸での発生は稀である.さらに,免疫抑制剤の投与歴がなく,加齢による免疫能低下が起因したEBVMCUの報告はない.また,EBVMCUの多くは自然軽快するが,化学療法や放射線療法が奏功するとの報告もある.今回,S状結腸に局在したEBVMCUに対して外科的切除を選択した1例を経験したので報告する.症例は84歳男性,心筋梗塞の既往がありシロスタゾール内服中.80歳時の他院大腸内視鏡検査でS状結腸に潰瘍性病変を指摘されるが,無加療であった.81歳時に血便精査目的で大腸内視鏡検査を施行し,潰瘍性病変の残存を認めた.生検を施行したが,病理では特記すべき所見は認めなかった.83歳時の大腸内視鏡検査で潰瘍性病変の増大を認め,生検の病理でEBVMCUが疑われたものの無加療であった.その2カ月後頃から血便と排便時痛が出現したため,当院を受診した.大腸内視鏡検査を施行したところ,S状結腸に亜全周性の潰瘍性病変を認め,易出血性であった.再度施行した生検でも病理はEBVMCUが疑われた.注腸検査では潰瘍性病変周囲に多発憩室が見られ,CTではS状結腸の壁肥厚と周囲脂肪織への炎症の波及が見られた.PET-CTでは同部位にSUVmax=29.4のFDG異常集積があり,他臓器に異常集積は見られなかった.有症状かつ増悪傾向のため,治療として化学療法や放射線療法を検討した.しかし,高齢であることに加えて,病変はS状結腸に局在しており,化学療法では腸管穿孔の可能性があり,放射線照射は困難であるため外科的切除の方針とした.腹腔鏡下S状結腸切除を施行し,術後経過良好であり12日目に退院した.病理では多彩の炎症細胞浸潤と濃染腫大核を有する異型細胞を認め,異型細胞ではEBER,LMP-1,CD30,PAX5が陽性でありEBVMCUの診断に至った.術後は追加の治療なく1年半無再発で経過している.
詳細検索