演題

下腸間膜動静脈奇形の1切除例

[演者] 大谷 悠介:2
[著者] 澁谷 祐一:1, 大石 一行:1, 寺石 文則:1, 岡林 雄大:1, 尾崎 和秀:1, 中村 敏夫:1, 福井 康雄:1, 西岡 豊:1, 志摩 泰生:1
1:高知医療センター 外科, 2:高知医療センター 消化器・一般外科

【はじめに】下腸間膜動静脈奇形は消化管動静脈奇形のなかでも稀とされ,多くは血便で発見される.今回我々は,血便を認めなかった下腸間膜動静脈奇形の1切除例を経験したため若干の文献的考察をふまえて報告する.
【症例】患者は35歳,男性.2016年2月から頻回のしぶり腹,粘液便を主訴に近医を受診.下部消化管内視鏡検査で左側結腸の壁肥厚と通過障害,CTで結腸脾弯曲部~直腸まで壁肥厚と周囲の脂肪織濃度の上昇,下腸間膜動脈に接する20mm大の瘤を認めた.血管造影で瘤は左結腸動脈からのnidusで,S状結腸動脈領域にも異常血管を認め,下腸間膜動静脈奇形と診断した.しぶり腹が1日数十回となり,嘔気も出現し食事摂取できず,10kgの体重減少を認めたため入院.回腸人工肛門造設し,症状改善し自宅退院となった.2ヶ月後のCTで,腸管の壁肥厚と周囲の脂肪織濃度の改善を認め,浮腫はS状結腸~上部直腸の範囲まで縮小したため,S状結腸切除術を施行した.病理組織診断では,腸間膜側の粘膜に縦走潰瘍と虚血性変化を認めた.nidusは拡張した静脈で,動静脈奇形として矛盾しない所見であった.術後3ヶ月後に人工肛門閉鎖し,術後6ヶ月症状なく経過している.
【考察】血便がなく腸炎症状のみを認めた下腸間膜動静脈奇形の報告は,Pubmed,医中誌で検索したところ自験例を含め9例であった.3例が腸切除,2例で選択的動脈塞栓,4例で保存的治療が選択されていた.根治的治療がおこなわれた5例では症状や消化管内視鏡検査所見の増悪を契機に治療がなされた.自験例では,当院受診より5年前に粘液便が継続するため近医を受診し,CTを撮影されている.13mm大のnidusを認めるものの,腸管の浮腫や周囲の異常血管,脂肪識濃度の上昇はなかった.症状は保存的に軽快し,経過観察とされていたが,定期的な病院受診はしていなかった.5年間でnidusが拡張し,nidusの盗血現象による虚血性腸炎と腸管浮腫にともなう狭窄症状を呈するようになった.定期的なCTのフォローがあれば,nidusの拡張や腸間膜の変化をとらえ,早期の段階で,nidusのみの切除など,より低侵襲の治療ができた可能性がある.今回は回腸人工肛門を造設することによって,腸管切除範囲を小さくすることが可能であった.
【結語】血便を認めなかった下腸間膜動静脈奇形の1切除例を経験した.
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