演題

急性虫垂炎との鑑別に苦慮し,保存的加療により軽快した特発性腸間膜静脈硬化症の一例

[演者] 藤田 覇留久:1
[著者] 大江 秀典:1, 桃野 鉄平:1, 青山 紘希:1, 近藤 祐平:1, 横山 大受:1, 平田 渉:1, 平井 健次郎:1, 岡部 寛:1, 光吉 明:1
1:大津市民病院 外科

【症例】74歳 女性【主訴】右下腹部痛【現病歴】右下腹部痛で近医を受診し,同部位に圧痛,反跳痛を認めたため虫垂炎を疑われ,当院ER紹介受診となった.【既往歴】糖尿病,高血圧症,脂質異常症【内服歴】漢方薬(芍薬,甘草,地黄,茯苓等生薬15種)を20年以上【入院時現症】体温:37.7℃ 腹部平坦,軟 McBurney点に圧痛,反跳痛あり 血液検査所見:WBC 8900 /mm3 CRP11.58 mg/dl 腹部造影CT検査所見:上行結腸から横行結腸にかけて浮腫性変化を広く認め,同部を栄養する静脈の広範囲に石灰化を認めた.また,虫垂壁肥厚,造影効果を認めた.【入院後経過】画像所見より特発性腸間膜静脈硬化症,虫垂炎の疑いで入院となった.虫垂壁肥厚については上行結腸からの炎症波及と考え,絶食,補液にて経過観察を行った.第6病日のCTでは虫垂の壁肥厚は増大,骨盤底に膿瘍を認めた.抗生剤投与により腹痛は改善し,第17病日のCTでは上行結腸の壁肥厚,虫垂壁肥厚,骨盤底膿瘍は消失し,第19病日に退院とした.現在退院後1ヶ月経過しているが再発は認めていない.【考察】特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis:以下,IMP)は腸間膜静脈硬化による慢性的な虚血性大腸疾患で,生薬の山梔子等が原因とされている.大津らはIMPの患者の使用生薬として山梔子が86%と最も高く,次いで甘草(54%),黄ごん(54%),茯苓(50%)としており,山梔子も含めた分解産物が右側結腸を中心に吸収され,石灰化や腸管の色調変化に関与している可能性があると報告している.本症例では山梔子の内服歴は無かったものの,甘草,茯苓を20年以上内服しており,IMPの原因となったと考えられる.多くは保存的に経過観察されるが,症状が続く場合や急性腹症を呈する場合は手術適応となる.医学中央雑誌による検索では,自験例含め78例の報告があり,平均年齢は58.3歳で,女性に多い傾向であった.手術に至ったものは29例(38%)であった.虫垂炎合併例は1例報告があり,先に虫垂を切除し,その後IMPに対し保存的加療が行われた.本症例においては上行結腸からの炎症波及と考え保存的加療を行い軽快した.しかし圧痛部位は右下腹部に限局しており,症状の原因としては虫垂の炎症によるものが主座であった可能性もあり,仮に保存的加療で軽快しなかった場合に虫垂切除術を行うか,IMP根治目的に結腸右半切除術等を行うか,判断が難しい症例であった.
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