演題

特発性腸間膜静脈硬化症の1治療例

[演者] 小畠 千晶:1
[著者] 黒瀬 洋平:1, 神原 健:1, 佐藤 直広:1, 金平 典之:1, 金澤 卓:1, 淺海 信也:1, 貞森 裕:1, 大野 聡:1, 高倉 範尚:1
1:福山市民病院 外科

症例は68歳男性.近医で,糖尿病,肝機能障害で加療され,漢方薬内服歴があった.便秘と腹痛を主訴に原因精査目的で当院紹介となった.CT検査で盲腸から横行結腸にかけての腸管拡張と壁肥厚を認め,腸管沿いの血管に石灰化所見を認めた.下部消化管内視鏡検査では回腸末端から脾弯曲に至るまで粘膜は暗青色調に変化し,浮腫やびらんを伴っていた.生検にて膠原繊維の沈着を認め,アミロイド染色は陰性のため,特発性腸間膜静脈硬化症と診断した.便秘症状を繰り返していることから手術加療を希望され,回腸末端から下降結腸に至る結腸亜全摘術を施行した.摘出標本の病理組織検査では,小静脈の石灰化を伴う線維性壁肥厚,粘膜下の石灰化所見を認め,腸間膜静脈硬化症と矛盾しない所見であった.術後経過は良好であり術後8病日目に退院となった.
[考察]特発性腸間膜静脈硬化症は比較的稀な疾患であり,腸間膜静脈の石灰化に伴う還流障害により慢性虚血性大腸病変とされる.発症の平均年齢60歳代とされるが,20歳代の若年発症の報告も認める.腹痛,排便異常などの症状により発症し,特有の下部消化管内視鏡所見やCT画像所見により診断されることが多いとされる.治療法は漢方薬の休薬による保存的加療と外科的切除であり,標準治療は定まっていない.保存的加療不応例,症状の反復,広範な虚血性変化を認める症例に関しては手術加療を考慮する必要があるとされる.静脈壁硬化の原因は現在も明らかではないが,肝炎,血管炎,糖尿病,さらには漢方薬の長期内服の関与が指摘されている.病変は上腸間膜静脈領域支配を中心に認め,本邦を含むアジア地域の報告が多いことから,漢方薬長期内服などの環境因子の関与がうかがわれる.本症例でも茵陳蒿湯の内服をしており本症発症の一因となった可能性が推察される.
我々は外科的治療で良好な経過をたどった特発性腸間膜静脈硬化症の1例を経験したので文献的考察を加えて報告した.
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