演題

健常成人に発症した盲腸捻転の1例

[演者] 中山 馨:1
[著者] 山本 穰司:1, 永井 基樹:1, 牧野 治文:1, 向後 正幸:1, 徳丸 勝悟:1, 藤川 幸一:1
1:鎌ヶ谷総合病院外科

症例は41歳の男性で,特記すべき既往歴なし.次第に増強する下腹部痛を主訴に,当院へ救急搬送された.腹部造影CTで右下腹部に鏡面像を伴う8㎝に拡張した盲腸および上行結腸を認めた.上行結腸にbird's beak signとwhirl signを認めており,同部より肛側の結腸は虚脱していた.拡張した小腸が盲腸の右側に存在しており,盲腸捻転が疑われ,緊急手術を施行された.下腹部正中切開で開腹すると,淡血性腹水を100mL程度認めた.盲腸は著明に拡張しており,盲腸とS状結腸脂肪垂の間の索状物を支点として,反時計方向に360°捻転しており,盲腸捻転と診断した.索状物を切除し,盲腸捻転を解除すると,上行結腸と盲腸が後腹膜に固定されない移動盲腸を認め,盲腸壁は拡張により菲薄化しており,一部漿膜損傷をきたしていた.盲腸は明らかな壊死を呈していなかったが,再捻転や穿孔が危惧されたため,回盲部切除術を施行した.術後経過は良好で,術後10日目に退院となった.
盲腸捻転は70歳以上の高齢者に多くみられ,40歳代までは神経精神疾患をもつ症例が多く,健常成人の発症はまれである.本症の発症機序については,盲腸の後腹膜への固定不全(移動盲腸)に加え,何らかの軸捻転の誘因が必要とされている.盲腸の固定不全は成人の剖検例で36.8%と比較的高率に報告されており,索状物,便秘,長期臥床などの誘因が存在する例では,本症の発症に注意する必要がある.診断はCTにてなされ,"coffee bean sign","bird's beak sign","whirl sign"など,盲腸捻転に特徴的な所見を組み合わせることで,ほとんどの症例で術前診断が可能である.治療は,手術による捻転解除が必要で,捻転解除後の腸管の拡張や血流障害の有無を評価して,腸切除か固定術を選択する.腸切除は再発を完全に予防でき,麻酔,手術手技の発達により,全身状態の悪い症例でも安全に施行できるようになった.しかし,拡張や壁菲薄化のない症例では,短時間に施行でき,腸管壁を開かない固定術の方が良い適応となる場合がある.壊死・穿孔例では,再灌流による敗血症性ショック誘発を防止するため,捻転を解除することなく腸切除を行う.術前診断が困難であり,血行障害の発生率が高率であることなどから,以前は死亡率32%と予後不良であったが,近年改善傾向にある.CTによる確実な診断,迅速な捻転解除および腸切除を行うことで,今後さらなる予後改善が見込めるものと思われる.
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