演題

全身化学療法+Bevacizumab投与中に直腸穿孔によるフルニエ症候群を来した下部直腸癌の1例

[演者] 福久 はるひ:1
[著者] 馬場 研二:1, 喜多 芳昭:1, 盛 真一郎:1, 柳 政行:1, 田辺 寛:1, 伊地知 徹也:1, 夏越 祥次:1
1:鹿児島大学大学院 消化器・乳腺甲状腺外科学

【はじめに】フルニエ症候群は生殖器,会陰部,肛門周囲を中心として急速に進行する壊死性筋膜炎である.今回,われわれは進行直腸癌に対しBevacizumabを含む全身化学療法中に腫瘍穿孔からフルニエ症候群を発症した症例を経験したので報告する.
【症例】症例は73歳男性.既往歴に2型糖尿病がある.X年8月,下血を主訴に近医受診.下部消化管内視鏡検査にて直腸RbにType2腫瘍を認めた.精査の結果,直腸癌Rb, Type2, cT4b(SI:前立腺), cN3, cM1(H2, PUL2); cStageⅣの切除不能進行大腸癌の診断で化学療法の方針となった.RAS mutantより,mFOLFOX6+Bevacizumab療法を開始した.3クール投与後6日,自宅にて意識朦朧状態となり,救急外来受診.WBC 12610,CRP 28.23と炎症反応の異常高値を認め,腹部症状を認めず敗血症の診断で広域抗生剤,グロブリン投与開始した.造影CT検査を施行し,直腸周囲から会陰部,左内側殿部,下腹壁にかけて皮下気種と膿瘍形成を認め,直腸癌穿孔に伴うフルニエ症候群と診断した.皮膚科と合同で緊急手術を行い,肛門周囲膿瘍の広範な開窓およびデブリートマンを施行し,同時にS状結腸ストーマ造設術施行した.術後は集中治療を要し,創部は連日の洗浄処置を施行した.その後,残存膿瘍に対して切開排膿を施行し,直腸尿道瘻に対して膀瘻造設,ストーマ脱落に対してストーマ再造設術などの外科的処置を要した.現在では,全身状態安定し,術後50日にmFOLFOX6単独で化学療法を再開した.
【考察】フルニエ症候群の原因は肛門周囲膿瘍や外傷,尿路感染など近傍の組織の細菌感染が多く,直腸穿孔もその一因である.死亡率20~40%と予後不良の疾患であり,早期に広範な開窓ドレナージを行う必要がある.また,Bevacizumab投与による消化管穿孔は数多くの報告があるが,腫瘍穿孔を契機としたフルニエ症候群の報告はまれである.本症例は切除不能進行直腸癌に対する化学療法中に直腸癌の潰瘍底が穿孔し,周囲組織へ炎症が波及しフルニエ症候群にいたったと考えられた.開窓,デブリートマンおよび洗浄処置により救命され,化学療法再開が可能となった.【まとめ】進行下部直腸癌に対するbevacizmab投与中に著明な炎症反応が出現した際は,腫瘍穿孔によるフルニエ症候群の可能性を念頭に適切な診断と治療が必要である.
詳細検索