演題

JSGS Art of the Year2017(手術部門):胃癌D2リンパ節郭清の国際標準化を目指して

[演者] 佐野 武:1
1:がん研究会有明病院 消化器外科

1993年2月に胃癌外科医として国立がんセンター中央病院に職を得た.丸山圭一,笹子三津留両先生のもとへ多くの外国人が見学に来る環境は刺激的で,彼らとのディスカッションは新鮮であった.国際学会などで欧米の外科医と語る機会を重ねながらどうにも気になったのが「D2郭清は正しく理解されていないのではないか」ということである.自分が欧米人になったつもりで取扱い規約の英語版を読んでみると,確かに理解されがたいと思われる部分がいくつもある.あちこちの施設を訪ねた経験にてらしてみても,そもそも術前に腫瘍の局在を正確に記録したり術後に新鮮標本を外科医が整理したりする習慣のない欧米で,わが国の緻密なデータに基づくリンパ節の群分類が理解可能だろうか.D2の何たるかについて,彼らを理論的に納得させ技術的に導くことは私の使命かもしれない,と考えるようになった.
1995年に英国シェフィールド大学に訪問教授として2か月間滞在する機会があり,内視鏡や手術を指導した.また2002年から2009年まで英国王立外科医会で開設された「D2胃切除講座」に主任講師として指導に出かけたが,この3日間の教育コースは,胃癌を学びたい若手外科医の受講生16名に対して専門医の講師陣が12名という構成で,講師同士での質疑応答が大変盛り上がり,英国におけるD2の理解を大いに助けたはずである.この講座はその後スウェーデンに移り,「北欧D2講座」として1年おきに開催された.2018年にはトロントで開催予定である.
こうした経験を通じて,D2のどこが理解され難いのか,どう説明すれば納得してもらえるのかを学んだ.2010年の胃癌取扱い規約第14版および胃癌治療ガイドライン第3版の同時改訂にあたり,世界に理解されるD2郭清を定義したいと考えて議論を重ね,従来のリンパ節群分類から独立した術式別のD分類を策定することができた.この英訳版は学会誌Gastric Cancerに掲載され,広く引用されている.
近年,腹腔鏡手術の普及が手術映像の蓄積・拡散に大いに貢献し,これに刺激されたかのように開腹手術もさかんに映像化されている.正しいD2技術が言葉でなく映像として伝わることは喜ばしいことである.ただ,私たちは「なぜD2なのか」について今後も繰り返し世界に向けて語り続けなければならないと思う.
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