演題

急性骨髄性白血病を背景に発症した消化管型ムコール症の1例

[演者] 倉田 徹:1
[著者] 庄司 泰弘:1, 佐々木 省三:1, 寺田 逸郎:1, 吉川 朱美:1, 北川 裕久:1, 藤村 隆:1, 寺崎 靖:2, 斎藤 勝彦:3
1:富山市立富山市民病院 消化器外科, 2:富山市立富山市民病院 血液内科, 3:富山市立富山市民病院 病理診断科

【はじめに】ムコール症は接合菌による感染症の総称で,非常に重篤な日和見型深在性真菌症の一つである.今回,急性骨髄性白血病を背景に発症した消化管型ムコール症の1例を経験したので,文献的考察を交え,これを報告する.
【症例】76歳,男性.1年半前に骨髄異形成症候群と診断され化学療法を施行していたが,2ヶ月前に急性骨髄性白血病を発症した.寛解導入療法の後の地固め療法施行中に発熱と下腹部痛を呈し,腹部CTにて骨盤内の回腸の壁肥厚像と同部位を起点とする亜イレウスを指摘された.イレウス管留置にてイレウスは改善したが,小腸内視鏡で回腸に2/3周性の潰瘍を認めた.同部位の生検で壊死組織内に分枝状の真菌が多数検出され,ムコール症が疑われた.抗真菌薬による加療を行ったが,症状出現後から2週間後の腹部CTにて小腸の穿孔,骨盤内膿瘍を認め,切除目的に当科紹介,手術となった.開腹すると,間膜側に結節状隆起を伴った回腸の穿孔病変を認め,同部位を部分切除しドレナージを施行した.病理では,小腸粘膜・間膜にびまん性に不整形の菌糸を有した分枝状の真菌の増殖・侵襲を認め,間膜側の隆起は真菌の血管浸潤により虚血に陥った壊死脂肪であった.消化管型ムコール症が疑われ,後に遺伝子検査にてRhizopus oryzaeが原因菌と考えられた.術後,AMPH-Bによる抗真菌薬の投与を行ったが,膀胱浸潤・穿孔を伴う後腹膜膿瘍を認めた.泌尿器科にて膀胱鏡下に可及的にデブリードマンを行ったが改善乏しく,原疾患の再燃も認め,術後50病日に死亡した.
【考察】ムコール症は,造血系悪性腫瘍,特に骨髄移植の患者の増加につれ,増加傾向であるが,消化管型として発症することは稀である.予後は不良で,死亡率は50-70%と報告されている.アゾール系,キャンディン系抗真菌薬は無効で,本邦ではAMPH-Bが第一選択肢となっている.早期の薬物治療とデブリードマンが唯一の治療方法であり,compromised hostにムコール症が疑われる症例には,全身状態が不良な場合が多いものの,積極的な早期診断・加療が必要である.
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